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初代ヴィクトリアマイル制覇コンビ。
北村宏司とダンスインザムードの絆。
posted2019/05/07 07:30
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Kyodo News
今週末は東京競馬場でヴィクトリアマイル(GI、芝1600m)が行われる。同レースは4歳以上牝馬による春の頂上決定戦。今年で14回目となる、まだ新しい競走だ。
第1回が行われたのは2006年。当時、古馬牝馬のGIレースは年に1回、秋に行われるエリザベス女王杯しかなく、春の目標として創設されたのが、このヴィクトリアマイルだった。
第1回目のこのレースでラインクラフトに次ぐ2番人気に推されていたのが、ダンスインザムードだ。
同馬は2年前の'04年にデビューから4連勝で桜花賞(GI)を優勝。オークス(GI)で4着と初の黒星を喫すると、アメリカンオークス(アメリカ、GI)は好走するも2着に惜敗。秋には、秋華賞(GI)4着後、秋の天皇賞(GI)とマイルチャンピオンシップ(GI)でいずれも2着。古馬の牡馬を相手に大善戦を見せ、高いポテンシャルを示した。
歯車が狂った香港での大敗。
しかし、その後の香港遠征で大敗(GI・香港カップに挑戦し13着)を喫したあたりから歯車が狂った。
帰国後は掲示板にすら乗れない競馬が続いた。2桁着順に負けることも珍しくなくなった。
同馬を管理していたのは藤沢和雄調教師。後に様々な調教師部門の記録を更新する伯楽だが、この時点でもタイキシャトルによるフランス・ジャックルマロワ賞(GI)勝ちやシンボリクリスエスによる秋の天皇賞(GI)と有馬記念(GI)の連覇('02、'03年)、ゼンノロブロイによる秋の天皇賞(GI)、ジャパンC(GI)、有馬記念(GI)の秋のチャンピオン路線コンプリートなど、数々の記録を樹立。
すでに名調教師の域に達していたそんな男が、泥沼からなかなか抜け出せないダンスインザムードに対し、ただ手をこまねいて見ていたわけではなかった。
「自分の気持ちだけで走ったら一杯になってしまう。いかに人間の指示に従って我慢出来るようになるか模索しました」
そのために少しでもリラックスできる森林馬道へ連れて行ったり、引っ張ってくれる人を頼ろうとするプール運動を行ったりと、次から次へとカードを切った。