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日米で起きた2つの降着の違いとは。
競馬の世界標準ルールとアメリカ式。

posted2019/05/07 12:20

 
日米で起きた2つの降着の違いとは。競馬の世界標準ルールとアメリカ式。<Number Web> photograph by Kyodo News

アドマイヤマーズが勝利したNHKマイルカップで、圧倒的1番人気のグランアレグリアは4着入線から5着に降着となった。

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Kyodo News

 先週末、日米のGIで上位入線した馬が降着となった。

 先に発生したのは5月4日、日本時間5日朝に米国チャーチルダウンズ競馬場で行われた第145回ケンタッキーダービー(ダート2000m、3歳GI)だった。

 L.サエスが乗るマキシマムセキュリティが直線で後続を突き放し、先頭でゴールを駆け抜けた。昨年のジャスティファイにつづく無敗の米国ダービー馬誕生かと思われたが、4コーナーで他馬の走行を妨害したとして17着に降着となった。

 それにより、1馬身3/4差で2位に入線したカントリーハウスの繰り上がり優勝が決まった。同レースで1位入線馬が降着となったのは史上初めてのことだった。

 3、4コーナー中間地点で先頭を走っていたマキシマムセキュリティは、内を1頭ぶんあけたまま4コーナーに進入した。水が浮いて上滑りする不良馬場だったので、荒れたところを避けつつ、窮屈な回り方をしたくなかったのか。

 そのまま綺麗にコーナリングができればよかったのだが、同馬は左コーナーを回っている最中でありながら手前をいったん右にスイッチし、馬2頭ぶんほど外にふくれてしまった。

 そのとき、直後に迫っていたウォーオブウィル(7着)を外に押圧し、ボーディエクスプレス(13着)とロングレンジトディ(16着)の走行も次々と妨害する。それらの外にいたカントリーハウスも若干不利を受けたように見えたが、騎手が大きく手綱を引く場面などはなく、直線でしぶとく伸びて2位に入線。結果として、大きな栄冠をつかむことになった。

実は降着のルールは日米で違う。

 今の日本なら、ほぼ確実に降着にはなっていないだろう。にもかかわらず、降着となったのは、アメリカは日本とは異なる降着ルールを採用しているからだ。

 現在、主要開催国における降着の判断基準は「カテゴリー1」と「カテゴリー2」に分かれている。

 カテゴリー1では、「その加害行為がなければ被害馬は加害馬よりも上位になることができた」とみなされた場合、加害馬は被害馬の後ろに降着となる。

 この基準では、加害馬と被害馬の入線時の着差が重視される。ゴールに近いところで生じた走行妨害による被害馬に与えた影響が大きく、前述したように、その走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着とした判断されれば降着となる。スタート直後など、ゴールから遠いところで生じた事象では、被害を与えていても、それが着順に影響したかどうか判断しづらいため、降着にならないケースが多い。

【次ページ】 日本ならおそらく着順はそのままだった。

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