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フィエールマン&ルメールの大快挙。
天皇賞・春で示した巨大な潜在能力。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKyodo News

posted2019/04/29 11:15

フィエールマン&ルメールの大快挙。天皇賞・春で示した巨大な潜在能力。<Number Web> photograph by Kyodo News

すべてのGIの中でも、天皇賞・春はかなり特殊な能力を求められる。ここを制したフィエールマンの能力はどう花開くか。

派手さはないが、かなりのポテンシャル。

 デビュー6戦目での天皇賞・春制覇というのは、1947年のオーライトの9戦目を更新する最少キャリア優勝記録だ。

 わずか6戦目でありながら、流れに合わせて都合のいいポジションを取り、後ろが来るのに合わせて動き、直線でライバルと叩き合って、相手が伸びたぶんだけまた伸びて競り落とす――という、百戦錬磨の古豪のような競馬をしてみせた。

 勝ちっぷりに派手さがないし、速い時計の裏付けもないが、「アーモンドアイとどちらが強いか」と思わせてくれる実力馬が、ようやく現れた。

 過去20年で、菊花賞と天皇賞・春の両方を勝ったのは、新しい順に、キタサンブラック、ゴールドシップ、ディープインパクト、ヒシミラクル、マンハッタンカフェと、名馬ばかりだ。フィエールマンは、そのなかに入っても上位のポテンシャルを感じさせる。

2400mが最短、という珍しい超長距離タイプ。

 登録している凱旋門賞への参戦に関して、手塚調教師は「秋はいろいろな選択肢があり、そのひとつ」と言うにとどめ、オーナーサイドも明言しなかった。が、ルメールは「出たらチャンスはあると思う。お母さんはフランスの馬だから、フランスが好きかも」と笑顔を見せた。

 適距離は最短で2400mと思われる、ディープ産駒にしては珍しいタイプだ。パドックに入ってきたときは落ちついており、騎手を背にして初めて気合を表に出す。余計なことにエネルギーを使わず、精神的にドッシリしているので、遠征に強いタイプだろう。

 ルメールは、ドバイターフ、桜花賞、皐月賞につづく、騎乗機会4週連続GI制覇をやってのけたと同時に、保田隆芳、武豊につづく史上3人目の8大競走コンプリートを達成。

 また、フィエールマンの父ディープインパクトは、ヒンドスタン(代表産駒シンザン)、パーソロン(代表産駒シンボリルドルフ)、サンデーサイレンスにつづく史上4頭目の産駒による八大競走コンプリートという大記録を同時に打ち立てた。

【次ページ】 競馬界の寡占状態を象徴するようなレース。

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クリストフ・ルメール
フィエールマン

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