オリンピックへの道BACK NUMBER
「弱さ」を自覚した宇野昌磨。
再び立ち上がるためにすべきこと。
posted2019/04/11 07:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
得難い経験をしたシーズンだった。
フィギュアスケーター宇野昌磨にとっての2018-2019シーズンは「信頼」と「責任感」、その2つの言葉と向き合い、ときに戦った1年でもあった。
平昌五輪で銀メダルを獲得し、迎えた新たなシーズン。宇野が意識したのは、「自分を信じること」だった。
昨シーズン、ここというときに、ジャンプで安全策を選択した自分がいた。それは自分を信じることができなかったからだと捉えた。まずは自分を信じてみようと思った。
だが、それは容易ではなかった。
「自分を信じるというテーマを掲げながらなかなかそれが成し遂げられない、自分を信じることが難しいなと悩んでいました」
それでも大会を重ねる中で、手がかりをつかんだ。それは試合前の負傷をおして出場した昨年末の全日本選手権だった。
「アクシデントの中でも、だからこそ信じることができました」
怪我によって雑念が取り払われたことが幸いしたと捉えた。同時に、信じたときの心境をつかむことができたと思った。
「その経験を後半の試合にいかせたらな、と思います」
五輪メダリストという責任。
自分への信頼とともに宇野が向き合ってきたのは、責任感だった。五輪メダリストという肩書きは、否応なく、以前と立場を異にする状況を生んだ。
アイスショーもそうだった。例えば「THE ICE」に出演したときだ。例年なら座長の立場にいる浅田真央が不在の中、宇野が自然にその立ち位置に押し出されることになった。
自分のせいで公演が失敗したらどうしよう。開幕を前に、強烈な重圧を覚えるとともに、責任を負う立場の重みを実感した。