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G大阪MF高「今さんに負けたくない」
元市船10番が辿る守備職人の系譜。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/03/29 17:00
川崎戦では相手のチャンスの芽を摘む働きを見せたMF高。まずはチームでの定位置確保を目論む。
ライバルは“鉄人”今野泰幸。
前年のJリーグチャンピオンに対しても、臆することなく自らのスタイルを出し切った高。昨季、トップデビューを飾った直後、かつて中国代表でもプレーした父を持つ青年は「ガンバでやっている以上、東京五輪も目指したい」と話したことがある。
しかしながら、若きボランチが今、最も意識するのは「今野超え」だ。
「他のチームで意識するボランチの選手はいないですけど、今さんには負けたくない。もっとも、僕とは比較にならない相手だけど、身近な存在として競争できているので負けたくないんです」
ガンバで現在、守備的なボランチとして計算が立つのは今野と高の2人のみ。高にとっては尊敬すべき先輩であると同時に、ポジション争いのライバルが今野なのだ。
では、高が目指すプレースタイルは今野なのだろうか――。筆者が考える答えはNOだ。
「明神さんみたいなボランチに」
本能的な動きをベースに、相手ボールを刈り取るフィジカル的な強さも併せ持つ今野のスタイルは、やはり唯一無二。172センチ、67キロの高は今野のようなパワフルさは持たないものの、予測やポジショニングの良さを売りにするボランチだ。ガンバの全盛期をCBとして支え、遠藤保仁や橋本英郎(現・FC今治)、明神智和(現・長野)ら数々の名ボランチとプレーしてきた山口智ヘッドコーチも、高の可能性を評価する1人である。
そんな山口ヘッドコーチに高が目指すべきは「明神では?」と水を向けようとすると、期せずしてこんな答えが返ってきた。
「高はボールを奪うところはもともと力強いところがあるので、もっとそこはレベルを上げてほしい。ボールに狙いをつけて奪い切る、そしてそのボールを明神さんみたいなタイプのボランチになって、簡単に(ボールを)味方につけられる選手になって欲しい」
ボランチという概念を生み出したサッカー王国、ブラジルではこのポジションをしばしば「カレガドール・デ・ピアノ(ピアノの運び手)」と呼ぶ。
文字通り、黒子としてガンバの全盛期を支えたのが明神という希代のボランチだった。