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2019選抜の2大投手がどっちも凄い。
完成型の奥川恭伸、素材の及川雅貴。
posted2019/03/22 18:45
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
2019センバツの注目株。
その「両横綱」は、星稜高・奥川恭伸と横浜高・及川雅貴投手。右投げ、左投げ、2人の本格派投手で間違いないだろう。
奥川・星稜は、初日23日の第3試合で履正社高(大阪)と対戦し、及川・横浜は24日の第2試合で、明豊高(大分)と当たる。
どちらのカードももっと上、準決勝、決勝で組まれてもよさそうな「黄金カード」とも言えよう。
星稜高・奥川恭伸(183cm82kg・右投右打)のすばらしさは、なんでもできてコンスタントに実力の8割から9割を発揮できる「完成度」の高さだろう。
まず“数字”で証明すれば、昨年秋の石川県大会・決勝戦で3イニングを無失点で抑えて以来、北信越大会、明治神宮大会の合計7試合48イニング3分の1……イニングでいえば5試合以上を「自責点0」、わずか3失点に抑えてみせた「実戦力」の高さがすばらしい。
その「48イニング」に含まれる内容が、またすごい。
北信越大会では、長野県代表の松本第一高戦で10連続三振を奪うと、東海大諏訪高を完封に抑えた翌日、連投の決勝戦で、啓新高(福井)を15回2失点、183球を投げ抜いてみせたから驚いた。
なんでもできる上に、打者を見られる。
奥川恭伸の「なんでもできるすごさ」。
いつでも145キロ前後が投げられて、それが1試合続く高性能な“エンジン”。打者に「消えた!」と感じるスライダー、フォークの高速の鋭い変化。2球でサッと追い込めるコントロールに、フィールディングもけん制も秋よりずっと上手くなってきた。
それと同等に、向き合った打者の能力を測りながら投げられる「野球的な社会性」が頼もしい。
高校生が3年になる間際。この時期の高校生投手は、捕手のサイン通りに捕手のミット目がけて投げるのでいっぱいいっぱい。実は、そういう投手がほとんどだ。
そんな中で奥川恭伸は、「打者」に向かって投げられる。目の前の打者を“評価”しながら投げられるから、手ごわいと見れば“9の力”で投げたり、“6”で済む相手だと見なせばそれなりの力の入れようで投げて、スタミナの無駄使いがない。
コンスタントな力を長く発揮できる。奥川恭伸のいちばんの「武器」が発揮できる理由は、そこのところ、根源になっていると見る。