フランス・フットボール通信BACK NUMBER
名門フラメンゴで少年10人が焼死。
ブラジルにはびこる劣悪な育成環境。
text by
エリック・フロジオEric Frosio
photograph byDR
posted2019/03/21 09:00
悲惨な環境の中で、サッカー界の未来のスーパースターを目指して練習に励むブラジルの少年たち。その寮の環境は劣悪極まりないが……。
「ペレ法」では救われない子供達。
リオデジャネイロ州のプロ選手協会「SAFERJ」の会長であるアルフレッド・サンパイオは、《底辺の選手》たちが喘いでいる悲惨な状況を、ずっと以前から訴えている。
「どのクラブもダイヤの原石を見いだして、大金を得ようと少年たちを育成する。しかしどこもそれに適した施設を整備する資金も手段も持っていない。
1998年に成立したペレ法は、子供たちに宿泊施設と教育を与えることを義務づけているが、具体的な条件やノルマは何も規定していない。その結果、どこも衛生面や快適さの配慮をまったく欠いたままだ。
わずか10平米のスペースに、10人の子供を押し込めることなどざらで、子供たちもそれで満足しているのは他に選択の余地がないからだ。親も貧困から脱するために、子供たちの成功を願って口をつぐむ。とても危険なスパイラルだ」
統括し、取り締まるべき当局にその能力がないのが問題である。法は存在するものの、順守させるための十分な手段を欠き、ときに当局自身がオフサイドを犯す。
ブラジルサッカー協会は見て見ぬふり。
2月15日、この“ニーニョ・ド・ウルブ”を視察したリオ政府の役人アンナクリスティーナ・ウト・マセドは多くの違反を指摘し、その結果、市当局は施設の使用禁止を通達した。
ところがまさにそのときにフラメンゴの選手たちは、前日のフルミネンセ戦の敗北(0対1)から回復するためのトレーニングを、ピッチの全面をつかっておこなっていたのだった。
「本当に酷い。クラブは好き放題にやりたいことをやり、ブラジル協会は見て見ぬふりで何も言わない」とアルフレッド・サンパイオは嘆く。
2月11日に生じた火事で、U-20の少年たちふたりが煙を吸い込み病院に収容されたバングーの監督でもあるサンパイオは、フラメンゴのクラブ史上最大の悲劇が、状況改善の契機になることに懐疑的である。
「幾つかのクラブでは、子供たちはまるで奴隷のように扱われている。奴隷というのはきつい言葉かも知れないが、決して誇張ではないんだ。たとえ自分の意志に反してそこにいるのではないにしても、非人間的な環境の中で暮らしているのは間違いない」
すべてが変わる日が、はたしてやって来るのだろうか。