フランス・フットボール通信BACK NUMBER
名門フラメンゴで少年10人が焼死。
ブラジルにはびこる劣悪な育成環境。
text by
エリック・フロジオEric Frosio
photograph byDR
posted2019/03/21 09:00
悲惨な環境の中で、サッカー界の未来のスーパースターを目指して練習に励むブラジルの少年たち。その寮の環境は劣悪極まりないが……。
「まるで貧民街の部屋という感じ」
とはいえ違法性は以前から市当局と消防署に指摘されており、それでも練習場を使い続けていたのは、フルミネンセやボタフォゴ、バスコダガマといったライバルクラブへの敵愾心を煽るためだったと言われている。
カンヌの育成組織で育った19歳のフランス人レイヤン・ベレが、フラメンゴのリザーブチームに加入したのは2016年のことであった。
未成年用の宿泊施設である“ニーニョ・ド・ウルブ”で寝泊まりすることはなかったが、練習のため彼は毎日そこに通った。彼によれば施設はヨーロッパの基準からは程遠いものだった。
「思っていたよりずっとプロフェッショナルではなかった」とベレは回想する。
「そこかしこが工事中で子供たちは仮住まいの建物で寝泊まりしていた。そうしたコンテナはとても小さく、設備もまったく不十分でまるで貧民街の部屋という感じだった。フランスでは絶対に見られないことだ。
ロッカールームもシンプルで、ベンチがひとつ置いてあるだけだった。食堂は衛生面で限界を越えていた。素晴らしいのはピッチとボールだけで、それ以外はこれがブラジルで最も優れたクラブであるとは想像できないものばかりだった。たしかに改修工事の途中だったとはいえ、本当に酷い練習場だったよ」
「最低限の最低限」の環境。
バスチア(2000~04年)、マルセイユ(2004~06年)などフランスの4つのクラブで8シーズンを過ごしたデメトリウス・フェレイラ(45歳)は語る。
「フラメンゴのような有名なクラブでこれほどの悲劇が生じたのだから、他のクラブの実態がどんなものか容易に想像できるだろう」
現在はサンパウロ近郊のバルエリでスカウトを務めるフェレイラは、自身がかかわっている未来のクラッキたちがどんな環境にいるかをよく理解している。
「クラブが子供たちに提供するのは最低限の最低限だけだ。その酷さといったらとても耐えられない。クラブはすべて付け焼刃なうえやりたい放題、言いたい放題で、子供たちを施設に次々と放り込んで危険な目にあわす。そんなやり方・考え方を変えるべきだ」