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名門フラメンゴで少年10人が焼死。
ブラジルにはびこる劣悪な育成環境。

posted2019/03/21 09:00

 
名門フラメンゴで少年10人が焼死。ブラジルにはびこる劣悪な育成環境。<Number Web> photograph by DR

悲惨な環境の中で、サッカー界の未来のスーパースターを目指して練習に励むブラジルの少年たち。その寮の環境は劣悪極まりないが……。

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エリック・フロジオ

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 フラメンゴの育成センターに所属する10人の寄宿生の生命を奪った火災による悲劇は、世界中に衝撃を与えた。同時にそれは、ブラジルの少年たちがどれほど悲惨な状況の中で、自分たちの夢を追い続けているのかをも白日のもとに晒した。

『フランス・フットボール』誌2月26日発売号でエリック・フロジオ記者がレポートするのは、日本やヨーロッパではまったく考えられないブラジルの育成環境の実態である。もちろんブラジルのすべてのクラブがそこまで酷くはないだろうし、フィゲイレンセのように優れた環境を持つクラブもある。しかし全体として問題があるのは間違いない。

 はたして状況は改善されるのか? 末尾にこの悲劇を機に育成組織の実態を公表する運動をはじめたジェトゥリオ・バルガス(36歳。元GK。フラメンゴの育成組織出身)のインタビューも掲載する。

監修:田村修一

名門フラメンゴの施設で少年たちが10人焼死。

 アルツール、アティラ、ベルナルド、クリスチャン、ジェドソン、ジョルジ、パブロ、リケルモ、サムエル、そしてビトール。全員が14~16歳の少年たちであり、プロサッカー選手になるという夢が、次第に現実味を帯びるようになってきた年頃であった。

 だが、2月8日の早朝、時計の針が5時を指す少し前に、スターになるという彼らの夢はほんの数秒で潰えてしまった。

 電気のショートからエアコンが火を噴き、寝室代わりに使われていた26人の少年たちが寝泊まりするコンテナが、瞬く間に火の海に包まれたのだった。

 唯ひとつの出入り口から最も遠い3つの部屋に寝ていた、10人の少年たちの命が永遠に奪われた。今も残る彼らの絶望の叫びは、これからもずっと“ニーニョ・ド・ウルブ(フラメンゴの練習場の愛称=コンドルの巣の意味)”に響き渡ることだろう。

 この練習場は、リオデジャネイロの西部、バルゲム・グランデ地区に800万ユーロをかけて2005年に建設された。ブラジル随一の人気クラブは、クラブ史上初めてその名声に相応しい施設を手にしたのだった。U-15~U-17の少年たちは、もうすぐコンテナ生活に別れを告げて、プロ選手用の快適な建物に移り住むことになっていた。

「そんなときに事故が起こったのは本当に残念だ。フラメンゴがここまで設備を拡充したのははじめてのことだったからね」と、クラブ職員のひとりは嘆く。

【次ページ】 「まるで貧民街の部屋という感じ」

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