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産休から復帰した竹下佳江の挑戦。
「怒るより響くことを言う」監督術。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2019/03/06 17:00
地元姫路での今季最終戦はGSS東京に3-0とストレート勝利。竹下監督を始め、悲願のV1昇格に向け気を引き締める。
支援企業はなんと約280社。
ファイナル6の第1週は3月2、3日に姫路市のウインク体育館で開催された。ファイナル6はホームゲーム制ではないため姫路のホームゲームではないが、地元の人々が大勢応援に駆けつけた。
橋本明球団社長は、会場を見渡しながら感慨深げにこう語った。
「最初は苦しかったですが、今は楽しくなってきました。以前はなかなかヴィクトリーナの試合を観てもらう機会がなかったので、営業に行っても、『本当に活動しているのか?』、『なんか記者会見ばかりやってるね』と言われました。
でも今季はホームゲームを開催できましたし、こうして地元の人たちに見ていただける機会ができて本当によかった。早く上(V1)にあがりたいですね」
今やスポンサー、後援会を含めヴィクトリーナ姫路を支援する企業は約280社にのぼる。ユニフォームやチームジャージにはスポンサー名が並ぶ。
そんなチーム関係者やスポンサーの期待を、現場はひしひしと感じている。特に監督が背負う重圧は並大抵のものではない。竹下監督に、監督業の面白さについて聞いた時、こんな答えが返ってきた。
「今はチームを勝たせなきゃいけないというのが強いので、面白いというよりは、責任を果たさなきゃいけないというほうが大きい。会社(株式会社姫路ヴィクトリーナ)にはずっとそういう思いで営業活動をしてくれている人がいたり、この現場だけじゃなくいろいろな人が動いてくれていることはよくわかっているので、どうにか結果を出していかなきゃいけないという思いが強いです」
「選手がどう成長できるか」を一番に。
しかしそんなプレッシャーのもとでも、コート上での竹下監督は変わらず泰然としている。
試合中はコートサイドに立ち、選手に近いところから試合をじっと見つめる。劣勢になっても表情を変えることなく、先を読んで早めにアップゾーンにいる選手に準備するよう自ら声をかける。
戦術面は中谷宏大コーチが担当しており、タイムアウト中は中谷コーチが円陣の中心で指示を伝える。監督はセッターの組み立てなど気づいたことを選手個別にアドバイスする。
中谷コーチは、竹下監督についてこう語る。
「人間が大きいですね。体はちっちゃいですけど(笑)。竹下さんには、プロ選手とはこうでなきゃいけないという理想像がたぶんすごくあって、選手にもそうなって欲しいという願望がある。監督としてこうしたいというものもあるとは思うんですが、それ以上に、選手の個人的成長を望んでいる。
その中でも勝っていかなきゃいけないので、バランスを見ながらうまくやっているんじゃないかなと感じます。僕なんて、選手に対して細かい要求をバンバン言ってしまうんですけど(笑)」