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産休から復帰した竹下佳江の挑戦。
「怒るより響くことを言う」監督術。
posted2019/03/06 17:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Noriko Yonemushi
2016年に誕生し、ロンドン五輪銅メダリストの竹下佳江監督のもと成長を続けてきた女子バレーボールのプロチーム「ヴィクトリーナ姫路」が、国内リーグV.LEAGUEのDIVISION1(V1)昇格をかけて戦っている。
姫路は今シーズン、V.LEAGUEのDIVISION2(V2)に参入したばかりだが、レギュラーラウンドは17勝1敗という圧倒的な成績で52ポイントを獲得し、1位でファイナル6に進出した。
レギュラーラウンドの上位6チームが争うファイナル6では、1位になったチームはV1昇格が決まり、2位のチームはV1の下位チームとのチャレンジマッチ(入替戦)に臨むことになる。
姫路が地域リーグで戦った昨シーズンは産休に入っていたため、竹下監督にとっては、長期のリーグ戦で指揮を執るのは今季が初めてのこと。「日々勉強です」と苦笑する。
「自分自身は(指導者としての)キャリアがない監督で、コーチたちにすごく助けてもらっている部分は多いんですが、選手時代には考えなかったことを今はすごく考えているし、決断しないといけないことも出てきます。やっぱり選手起用であったり……。
人数が増えれば悩みも増えます。コートに立てる人、立てない人というのが出てくるので、フォローしないといけない部分であったり、逆にドライでいないといけない部分もあります。情だけでは解決できないことが出てくるので、難しいなと感じる部分はありますね」
創部当初の3人から今は22人。
3年前にたった3人の選手でスタートしたチームは、今年内定選手6人を加え、22人の大所帯となった。以前は、どうやって選手を集めるか、少ない人数でどうやりくりするかに苦心していたが、今季は違う難しさに直面している。
現役復帰した選手や、他チームから移籍した選手、トライアウト受験など、選手の入団の経緯はさまざま。その1人1人の境遇に監督として寄り添ってきたからこそ悩みもある。
「シビアな世界だから、結果を出せるか出せないかで大きく変わってくる。それは選手たちもわかっているとは思うんですが、それでもメンタルのやりどころが難しいのもわかります。
人間って感情の生き物だから、やっぱり感情はあるじゃないですか。情だってある。自分は選手に一番近いところにいる監督だと思っているので、選手の感情や葛藤、1人1人がどういう頑張り方をしているかというのはよく見えているんですが、それだけでは解決できない問題を、私が決断しないといけない。そこは入り込みすぎず、ちゃんとフラットな目で見てあげないといけないなというのはあります。
振り返るといろんな指導者がいて、情で頑張っていた人もきっといただろうし、そこはフラットでいなきゃいけないということでドライな監督もいました。やはりここは実力社会なので、強い者がコートに立つという、ドライなところは持っていないといけないなとは思っています」