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「負けるが勝ち」を知らない大学生。
最低限の勉強は野球にも効果がある。 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byHideki Sugiyama

posted2019/03/06 07:00

「負けるが勝ち」を知らない大学生。最低限の勉強は野球にも効果がある。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

まさに野球のためにこそ、野球一筋ではなく教養を身につけることが重要な場面もあるのだ。

監督からも配球にダメ出し。

 3点リードの8回で2死二、三塁、3ボールの不利なカウント。

 ここは、ひとつ退いて歩かせて、満塁の走者は背負うが、カウント0-0の“出直し”でよかったはずだ。「3ボール」になったら、勝負は半分バッテリーの負け。そういう理解が必要な場面だったように思う。

 監督さんもその考えを採って、試合後に捕手の配球に強烈な「ダメ出し」を送ったものだ。

「なんか言ってやってくださいよ、こいつに!」

 かなりご立腹のようだった。

「あそこは向こうも、甘いの来るって待ち構えてるとこだからなぁ……」

 高校時代から知っている捕手だったので、ちょっと口を出した。

「負けるが勝ちって知らない?」

「負けるが勝ちって、あるじゃない?」

 と言ったら、えっ? という顔になった。

 負けるが勝ちって知らない? と訊いたら、

「はい、知りません」

 というので、今度はこっちのほうが、えっ? と驚いた。じゃあ、急がば回れは? と訊いたら、

「すいません」

 と、ほんとにすまなそうに下を向いたから、かわいそうになってしまった。

「急がば……ですか?」

 それでも、ユニフォームのお尻のポケットから小さなメモを出して書き込んでいるのだが、

「いそがば」

 と書いていたから、ほんとに知らないんだ……と、なんだか悪いことを言ってしまったかと、モヤモヤしたものが残ったものだ。

【次ページ】 「勉強」は間違いなく野球の役に立つ。

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