マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「負けるが勝ち」を知らない大学生。
最低限の勉強は野球にも効果がある。
posted2019/03/06 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
たまたま、息子さんが本気で「プロ」を目指しているというお父さんとお話をする機会があった。
もちろん、すでに新聞報道では今年のドラフト候補に挙げられている選手。ちなみに、高校生である。
「いろんな人に訊いてみたんですよ、候補に上がっている選手の親御さんとか、プロに出している親とかに。高校野球は教育の一環とか、文武両道って言いますけど、やっぱりプロに行こうってヤツは野球ひと筋っていうか……。勝負賭けたらやっぱり野球一本で、なかなか勉強にまで手がまわらないみたいで、それでしょうがないんですよね」
ですよねって言われて、そうですよというわけにもいかないが、自分の高校野球当時を振り返ってみても、「プロへ!」とはぜんぜん思ってなかったのに、実情は「野球一本」みたいな偏った学校生活を送っていたのは確かだった。
むしろ、勉強もしているヤツ、野球部なのに勉強のできるヤツを「変わりもの」のような目で見るような空気が部の中にあったのは、“ウチの高校”だけではなかったようだ。
3点リードの8回、どう守る?
思い出した場面があった。
去年の秋だ。ある大学のオープン戦で、こんなことがあった。
3-0でリードしていた試合が8回のウラになって、完封が見えてきた投手の球筋が散らばってきて、なんとか2死はとったが二、三塁。打者のカウントも3ボール1ストライクとなって、さあどうするんだ、バッテリー。
と……捕手が外いっぱいにミットを構えた。
うわっ、ハンパだなぁ。
そう思っていたら、中に入ったストレートを「待ってました!」のフルスイング。打った瞬間、投げた投手が頭を抱えて、打球はレフトスタンド一直線の同点3ランとなってしまった。
そのまま試合は延長に入ったが、同点3ランで流れが一気に逆転。10回裏のシングル4連打で、あっさりサヨナラで決着した。