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ピクシーが語るJと背番号への思い。
「他の選手が10番なんてありえない」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/03/01 11:30
自信と自己愛に満ちた言葉が微笑ましく響くのは、ストイコビッチの魅力を私達が知り尽くしているからだろうか。
代表でも決して10番を譲らなかった。
今回のインタビュー中、当時のユーゴスラビア代表の話題になった時に、こんな質問をした。
「サビチェビッチやミヤトビッチと、ヨーロッパのトップレベルのクラブでエース級の活躍をしていた選手たちがたくさんいた。それでも、代表での10番はあなたでしたね?」
ちょっとだけ、イジワルな質問だとはわかっていた。ピクシーの10番への思いはもちろん知っていた。それをあらためて表現してほしかったのだが、聞かれたピクシーは声をワントーン上げて、こうまくし立ててきた。
「他の選手が10番を付ける、それはありえない。そんなことを私に言ってくることは、ノーチャンスだった。みんな、ユーゴスラビア代表では10番が誰なのか、それはわかっていた。私も10番以外でプレーすることなんて、考えたことがなかった。
思い出してほしい。'94年に名古屋に行った当初、私は難しい時間を過ごした。でもそれは、10番を付けられなかったからでもある。いつも8番とか7番を付ける試合が多かった。うれしくなかった。何度も監督に聞いたけど、取り合ってはくれなかったね。もちろんプロとしてその決定はリスペクトした。でも心が折れたね」
2008年に名古屋の監督に就任した際のこと。普通、監督やコーチに支給される練習着には、選手がつける若い番号ではなく、50番台以上の重たい数字がつけられている。ただ、指揮官・ピクシーのシャツの裾には、「10」と刺繍されていた。「毎日、このシャツを着るのが楽しい」と笑っていたことが思い出される。
サッカー界における、絶対的な背番号。とはいえ、世界中を見渡しても、ここまで10番にこだわるのは彼ぐらいではないだろうか。
Jと欧州の「差」について。
もう1つ、印象的だった言葉がある。
Jリーグに長く居続けることで、欧州トップレベルとはどうしても差が生じてきてしまうのではないか。そのギャップや葛藤はなかったのだろうか。
かねてから「サッカーの歴史において、ヨーロッパという地域はどこよりも先んじている。それは他とは比較にならない」という持論を語っている。それを踏まえた上で、ピクシーは熱くこう語りだした。