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ピクシーが語るJと背番号への思い。
「他の選手が10番なんてありえない」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/03/01 11:30
自信と自己愛に満ちた言葉が微笑ましく響くのは、ストイコビッチの魅力を私達が知り尽くしているからだろうか。
Jリーグ特有のアイデンティティが大切。
「ただ、あまりそのギャップは心配していなかった。少し不満があったのは、当時のJリーグの戦術的な部分。特に守備面では、あの頃はどの試合もどのチームも戦術的なミスがすごく多かった。
でもまだ始まったばかりのリーグ。我慢することも必要だった。それが年々、少しずつ良くなっていったし、名古屋もベンゲルが来てからは組織的な守備ができるようになっていった。日本人選手たちは、サッカーとは機能的に動くべき競技ということの意味を理解していったのだと思う。
もちろんいつも言うように、ヨーロッパと比べられる国や地域はどこにもない。あそこはサッカーにおいては特別な土地だから。でも、日本も成長、進化するための努力を続けているから、良い結果が出てきている。
私が、なぜ長くJリーグでプレーし、指揮してきたのか。それは、非常に組織されたリーグであり、国だったから。そしてJリーグ自体が毎年どんどん成長していく姿を、我々に証明していってくれているから。今では、ヨーロッパのトップ5のリーグと比べる事自体がナンセンスだと思う。
そんなことよりも、Jリーグは今、自分たちのアイデンティティを見つめて、大切にし、それを守っていくべき。世界のサッカー界に向けて、しっかりとしたパスポートを持つこと。まあ、最近は二重国籍が認められる国も多く、私自身も2つの市民権(セルビアとフランス)を持っているけど(笑)。でもJリーグはどこを真似するのではなく、自分たちこそが大切だということを忘れないでほしい」
自己愛は、誇りなのだ。
今回あらためて感じたことがある。ピクシーは何よりも自分のことを信じ、認め、愛している。それを自己愛と記したが、何も自欲に溺れるという意味ではなく、胸を張り、自信を持ってサッカーと共に生きている姿が今も変わらずそこにあった。
だから、Jリーグにもその姿勢を求めているのだろう。
「普通にヨーロッパだけでプレーし、生活していたら知り得なかったと思う。日本やJリーグという素晴らしい場所を」
今もピクシーは、愛を持ってこちらに熱視線を送っている。