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水泳の賞金が高騰している理由。
連盟の求心力と、他競技との競争。
posted2019/02/25 10:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
2月16、17日に行われた競泳のコナミオープンで、話題になっていたことがある。国際水泳連盟が今年1月中旬に開催を発表した、新たな国際大会「チャンピオンズ・スイム・シリーズ」である。
これは3つの大会から構成されるシリーズで、4月に中国・広州、5月にはハンガリー・ブダペスト、5月末から6月初頭にアメリカ・インディアナポリスで、それぞれ大会が行われる予定だ。
話題となったのは、賞金額が今までとスケールの異なる大会であること。とはいえ競泳での賞金大会が初めてというわけではなく、各地で行われるワールドカップでも、すでに賞金は設定されていた。
ワールドカップに関して言えば、2018年は計7大会が行われ、各大会のそれぞれの種目の優勝者らへの賞金が1500ドル。さらに「クラスター」と呼ばれる大会の区分ごとのランキング、大会全体のランキングなどに対して賞金があり、昨年の場合、男子のトップは28万ドルを大きく超える賞金を得ていた。
1ドル=110円なら3000万円以上となる。この収入で生計を成り立たせている選手も珍しくはない。
背景には、連盟が関与しない大会。
しかし、新たに始まる大会はそれを上回るものになる。各種目の優勝賞金は1万ドルとなるなど、賞金総額は300万ドル(日本円で約3億3000万)。加えて、大会出場にかかる交通費などの経費も提供してもらえる。
リオ五輪女子200m、400m個人メドレーの金メダリストであるカティンカ・ホッスー(ハンガリー)など、トップクラスの選手がすでに出場を表明している。
新たな大会がスタートする背景には、国際水泳連盟と関係ない団体が始めようとした大会の存在がある。80万ドル規模の賞金を準備し、昨年12月にトリノで開催されることになっていたが、国際水泳連盟が承認せず中止となった。