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水泳の賞金が高騰している理由。
連盟の求心力と、他競技との競争。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2019/02/25 10:30

水泳の賞金が高騰している理由。連盟の求心力と、他競技との競争。<Number Web> photograph by Getty Images

ホッスー(中央)は早々に大会出場を宣言。今井月(左)にとっては世界レベルで戦う良い機会となるが……。

選手が他の大会に流れるのを防ぐために。

 それに真っ向から反論する姿勢を見せたのが、ホッスーら3名の選手だった。非公認の賞金大会に参加した場合、オリンピックへの出場を禁じる可能性があるといった旨の圧力を国際水泳連盟から受けたとアメリカで提訴したのである。

 それを受けて国際水泳連盟は、どのような大会であっても出場を認めると、態度をあらためた。とはいえ管轄外の大会へと選手が流れるのは防ぎたかったのだろう、それが今回の大会創設へとつながっている。

 そこには、競技団体がスポーツをどのようにビジネスとして成立させていくかという課題も浮かび上がる。

 国際水泳連盟に限らず、競技を管轄するさまざまな国際団体が、競技の発展のために大会を新設したり制度を新しくしてきた。だからこそ、さまざまな競技で年間を通じて開催されるシリーズの大会がある。それらの多くは賞金大会である。

 賞金大会を成り立たせるにはビジネスとして収益をあげる必要があり、さらにそのためにはトップクラスの選手にどれだけ参加してもらえるかが重要となってくる。連盟が関与しない大会に選手が流れてしまえば、競技の力そのものが低迷する危険性がある。

競技の人気によって五輪の分配金も変わる。

 また、競技間の競争関係も無視できない。

 以前、ある競技の指導者が「他のスポーツに子どもが流れれば、こちらは減る。それは未来にとってマイナスです」と語っていたことがある。

 競技の将来をめぐる裾野の拡大という要素に加え、オリンピック競技が国際オリンピック委員会によってランク分けされ、それによって分配金が大きく異なるのも、競争の1つだ。

 ロンドン五輪のときの分配金は4ランクに分けられ、最高ランクだった陸上には4700万ドル、一番下のランクの団体には1400万ドルだったという。ちなみにリオデジャネイロ五輪では5ランクに分けられ、最高のAランクは陸上、水泳、体操だった。

 このランクは、メディア露出の度合いや観客動員数などの要素、つまり人気で決まる。

 いずれにせよ、競泳の新シリーズは始まり、世界選手権に向けて注目も高まる。今後、連盟の大会と日程が重なってくることもあるだろう。さて、日本勢はどうするのだろうか。

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