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弱い体質、遅いデビューからGI馬に。
インティと武豊の丁寧な出世街道。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2019/02/22 16:00
7連勝でGI馬まで上り詰めたインティ。ルヴァンスレーヴとのダート頂上対決は実現するだろうか。
「苦労した馬なだけに感慨深い」
「苦労した馬なだけに感慨深いものはありました」
野中調教師はそう言い、更に続けた。
「久しぶりに前日の輸送だったし、相手も強化されて心配がないわけではありませんでした。芝のスタート自体は軽い走りをする馬なので大丈夫だと思ったけど、1600mという距離も初めてでしたしね……」
ここまで6連勝の内訳は1戦だけ1700mがある事を除けば残り5戦は全て1800m。距離としては僅かな差だが、コーナーを4つ回る1800m戦と1ターンの東京の1600m戦では流れも違えばレースの質そのものもまるで違う。
「あまりに速いペースになった時、それに巻き込まれるのだけは心配でした」
指揮官はレース前の心境をそう述懐する。
もちろんその気持ちは鞍上も同じだった。武豊騎手は言う。
「他にもスタートの速い馬がいたので、位置取りに関しては相手の出方や流れをみて決めようと思っていました。正直、番手でも良いと考えていました。ところがゲートが開いた後、相手が行く構えを見せなかったので『なら先手を取ろう』と切り替えました」
武豊が作り出した最高のペース。
前半の3ハロンが35秒8、5ハロン通過は60秒2。前年が同34秒1-58秒3だったから自分のペースに持ち込めた事がよく分かる。
「ユタカ君が上手に乗ってくれました」と野中調教師。
「思い通りのラップでよいペースで走れていました。だから直線では他の馬を待つ事なく、自分からゴーサインを出しました」
そう語る武豊騎手は、指示した途端に素晴らしい伸びを見せたので、後続との差が開いたであろう事を感じた、と続けた。
最後は2年前の覇者で、前年も2着に好走していたゴールドドリームが猛然と追い上げてきた。しかし、一歩早く抜け出していたインティは、この追い上げをクビ差退けて、真っ先にゴールに飛び込んでみせた。
「最後はホッとしました」と野中調教師。一方、ジョッキーは次のように語った。
「昨年の夏に初めてコンビを組んで、良い馬だとは感じたけど、体質が弱いと聞いていたので、僅か数カ月後にフェブラリーSを勝てるとは想像もつきませんでした。実際、フェブラリーSの話が出たのも前走(東海S)を勝った後だったように、本当に1つずつステップアップしてきた馬。僕が乗った馬の中でもこれだけ1つ1つ丁寧に勝ち上がってきたのは初めてです」