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<指揮官ハリルホジッチが英雄になった瞬間>
アルジェリアの奇跡はいかにして起こったのか。
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2015/06/14 10:30

2014年7月2日、ブラジルから帰国したアルジェリア代表は、想像を絶する熱狂的な歓迎で人々に迎えられた。空港から大統領官邸までの道のりは、彼らの姿をひと目見ようとする観衆で埋め尽くされ、アブデラジズ・ブテフリカ大統領は心のこもったねぎらいの言葉を選手ひとりひとり、スタッフひとりひとりに投げかけた。
同国史上初のワールドカップ・ベスト16進出。しかもラウンド16では、優勝したドイツ相手に一歩も引かぬ死闘を演じ、延長戦の末に惜敗。誇り高い敗者として、胸を張って彼らは祖国に帰還した。
だが、予め成功が保証されていたわけではない。むしろ大会前は、グループリーグ敗退が大方の予想であった。
「机上の論理では、アルジェリアはグループH(他にベルギー、ロシア、韓国)の中で4番目だ」と、フェネック(アルジェリア代表の愛称)を率いたヴァイッド・ハリルホジッチも本音を語っていた。
「'82年のチームがアルジェリア史上最強だったが、彼らですら(初戦で西ドイツを破りながら)グループリーグを突破できなかった。その後出場した'86年と'10年は、ひとつの勝利もあげられなかったうえに、得点もフリーキックの1点だけだった。
つまりわれわれに期待されているのは、アルジェリアサッカー史上最も大きな成功であるわけだ。私にできるのは、3試合爆発するために昼夜働いて準備することだが、それでも目標(ベスト16)を達成できるかどうかは何とも言えない」
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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