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「日本文化の粋」を感じる、和竿をめぐる職人文化史。~1788年創業の和竿本家が語る膨大なこだわり~
text by
馬立勝Masaru Madate
photograph bySports Graphic Number
posted2016/08/07 09:00
『江戸和竿職人 歴史と技を語る』松本三郎・かくまつとむ共著 平凡社ライブラリー 1300円+税
遊興としての釣りが武士階級から庶民にまで広がり、江戸っ子のレジャーになったのは江戸時代の後半、天明期に入ってからという。本書は、天明八年(1788年)創業の江戸和竿総本家「泰地屋東作」六代目の竿師松本三郎氏が語る和竿の歴史とその制作の技の数々。豊かな職人文化史だ。
六代目の人柄がいい。古さが売りの老舗なのに、天明三年とされてきた創業年を職人の家だから文書がない、伝聞推定が多いと首をひねる。「私が六代目を継いでから信頼度の高い文献が出てきて」、以来、創業は天明八年を名乗るようにした。「三代目の竿を持っている」という人がいても、「まず違いますよ」。関東大震災があり大空襲があった。父親(四代)の竿すらおよそ見かけないのだから……と筋を通す潔癖さ。