リオ五輪PRESSBACK NUMBER
日本時間6日8時15分の瞬間に――。
五輪開会式に託されたメッセージ。
posted2016/08/06 14:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
8月5日。開会式が行なわれ、リオデジャネイロ五輪は幕をあけた。
いつも開会式は行われる前から、注目を集める。どのような演出がなされるのか、その担当は、テーマは……。大会ごとにセレモニーは比較される。競うように、独自のカラーを打ち出す。
華やかさばかりではない。開会式は、その開催都市がメッセージを伝える場でもある。セレモニーそのもの、あるいは要所において、メッセージは披露される。
例えば、1964年の東京五輪。最終聖火ランナーを務めた坂井義則は、1945年8月6日、広島で生まれた学生だった。
「彼には、組織委員会の、日本国全体の思いが託されていたのでしょう」
開会式を撮影したスポーツ・カメラマンの岸本健は、以前こう語っていた。焼け野原から再起した姿を、広島生まれの青年を通じて伝えたのだ。
リオのテーマは世界平和と環境保護。
リオの開会式がテーマとしたのは、世界平和と環境保護。先住民から始まり、ブラジルに到達したポルトガル人、アフリカから送られてきた奴隷、各地からの移民、さまざまなバックグラウンドを持つ人が、ともに暮らしてきた歴史を再現した。そこにブラジルの持つ多様性が浮き彫りになり、数多くのパフォーマーが踊る姿に、融合してともに生きるブラジルの歴史を背景とする寛容性の重要さが込められていた。
式が始まって10分強、日本時間で6日午前8時15分にあたる頃には、日系移民にまつわるストーリーが登場したのも、その時間が日本にとって特別な時間であるからこそ、意図されたものだった。
会場のスクリーンに、氷河の融解、地球温暖化についての予測が表示される場面もあった。それもまた、明確なメッセージだった。
大会をめぐり、様々な問題が起きてきた。開会式当日も、あちこちで抗議デモが起こり、治安部隊との衝突による負傷者も出た。
それでも、場内にはラテンのリズムと笑顔が満ちていた。自国が抱える問題と苦さからは目をそらさないが、それでも希望を語る。演出を担った映画監督フェルナンド・メイレレスの強い決意でもあったかもしれない。リオへ、ブラジルへ、世界へとメッセージを発した。だからこその力強さが、選手団入場前の演出には感じられた。