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異例の日中合同合宿で見せた、
男子体操の“本気の呉越同舟”。
text by

矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2019/02/19 17:30

ナショナルトレーニングセンターで行われた合宿で、鄒敬園のあん馬の演技を真剣に見つめる白井健三。
世界選手権で日本は屈辱、中国は復活。
互いに'20年東京五輪で団体金メダルを狙う立場。強化のための施設やサポート体制を見ても、どちらかが突出しているという状況ではない。
同じ場所で同じ時間に練習をすることには手の内を見せるというリスクもある中、まさに異例中の異例といえる合同合宿が実現した背景には、水鳥寿思男子強化本部長の強い思いがあった。
日本は昨年10、11月に行われた世界選手権で、'07年大会以来となる金メダルゼロの屈辱を味わい、団体では銅メダルへと陥落した。
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片や中国は、金メダルなしに終わったリオデジャネイロ五輪からの立て直しに成功し、昨年の世界選手権では4年ぶりに団体王者へ返り咲いた。
そんな折、昨年9月に中国・北京のナショナルトレーニングセンターを視察していた水鳥本部長は「次は選手同士で合同合宿を行いたい」と発案し、水面下で調整を続けていた。
合計2週間もの、本気の合同練習。
そして、世界選手権での敗北という現実に直面し、選手や指導者たちの間でも危機感が高まった。日本としては'20年東京五輪に向けて待ったなしの状況。これらの背景があり、日中のトップ選手がそろって参加する“本気の呉越同舟”が実現した。
日中が互いのナショナルトレーニングセンターで練習したことは過去にもある。
'99年に中国・天津で世界選手権が開催されたときは、大会前に日本選手が中国で合宿を積んだ。'11年に東京で世界選手権が開催されたときも、中国選手が今回と同じ味の素ナショナルトレーニングセンターで練習している。
しかし、双方の選手が同じ場所、時間に練習するのは異例のこと。しかも今回は、1月に日本選手が北京で約1週間練習をし、2月に中国選手が東京で練習している。短期間に延べ約2週間も“同舟”しているという、刺激的な形式だ。