大相撲PRESSBACK NUMBER
「白鵬杯」で感じた希望と危惧。
相撲界がこれからも繁栄するために。
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2019/02/24 11:30
白鵬杯には多くのゲストが駆けつけ、KONISHIKIとのトークショーも行われた。白鵬の懐はなんとも深い。
強い力士が生まれる地域が固定化。
そして2つ目は、強い力士を輩出している地域が現在の大相撲の構図と似通っている点である。
今大会で強かったのは、熊本や鹿児島といった九州勢と東京、千葉といった関東勢、大阪や兵庫といった地域だった。
これらの地域は参加チームも多く、盛んに相撲の振興に取り組んでいることを再認識させられた。そして、彼らは決して少数精鋭というわけでもなく、特定の力士や指導者に依存することなく安定して優秀な選手を生み出しているということだ。
ADVERTISEMENT
しかし、かつて隆盛を極めた東北と北海道は今回も結果を残すことができなかった。参加チームも少なく、早々と会場を後にしていたのは残念だった。
地域的な復権には、どうしても時間がかかる。道場も必要だし、指導者も必要だ。環境を整えた後で、今度は相撲文化を地域に広げなければならない。そうしなければ誰も相撲を始めようとは思わないからだ。
それだけの使命感を持った人が、粘り強く相撲のために尽くさなければ相撲文化は復活しない。一度廃れたものを元に戻すは本当に難しいのだ。
素材型の力士にも出てきてほしい。
最後の1つは、素材型の選手が殆ど見られなかったということだ。
大相撲を支えてきた力士の中には、入門前に相撲経験がそれほど無い力士も数多い。例えば初代貴ノ花は元々水泳のオリンピック強化指定選手だったし、稀勢の里は野球の名門・常総学院からスカウトを受けるほどの選手だったことは有名である。現役で言えば貴源治と貴ノ富士の兄弟は、バスケットボールの茨城県選抜に選出されて全国3位に入賞している。
今回白鵬杯で上位に入ったような、少年時代から相撲に取り組んできたタイプに相撲を続けてもらうことはとても大切なことだが、最近の大相撲で気になるのがこうした素材型の力士が減少していることである。
現在の白鵬杯は、今相撲に取り組んでいる相撲少年にさらに相撲を愛してもらうためには極めて有意義だ。だがさらにその先を見据えると、稀勢の里のような素材型の選手をいかに発掘し、彼らに相撲を知ってもらい、愛してもらう入り口も同時に準備する必要があるのではないかと思う。