野球善哉BACK NUMBER
菊池雄星「僕らが続かないと失礼」
筒香の勇気ある発言を孤立させるな。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byAFLO
posted2019/02/14 10:50
筒香嘉智を孤立させてはいけない。野球界の歩みを進めるためには、声をあげる選手が必要だ。
観客動員は増えていても……。
その発端は、地元のチームに帰る中で野球人口の減少を目の当たりにしたからだ。かつては強豪と言われたチームに子どもがいない。たくさんのチームが部員集めに苦労している。指導者からの声を多く耳にして、地道な活動を続けてきたのだ。
「スタジアムにはお客さんがたくさん入っています。ほぼ全球団の観客動員が伸びているという現実があるわけじゃないですか。だから、スタジアムにいるだけでは野球界の危機は感じにくいと思う。実際、僕もそうでした。それが地元に帰り、昔あったチームとか、僕が卒業したチームの活動ができなくなるかもしれないというのを見てきた」
筒香が訴える野球界の問題は、どの地方にも存在する。それほど、野球人口減少は危機的状況と言える。筒香と菊池ではアプローチは違っていても、日本の野球界が抱える現状に、プロ野球選手としての責任を強く感じている点は共通だ。
「僕らが続かないと筒香に失礼」
菊池は現状の野球人口減少の遠因について、「答えはひとつじゃない」と前置きした上でこう語る。
「筒香が言っていますけど、野球に限らずスポーツは楽しむものだと思います。昔は健康的に、楽しく育って欲しいと保護者の方々は野球教室やチームに入らせていたと思いますけど、それが変わっていった。
チーム作りをする中で、『今年のチームは勝てるんじゃない?』、『この子はプロ野球選手になれるんじゃない?』という風になっていって、本来の目的から徐々にシフトした。
当然、『楽しい』といったって、試合に負けてヘラヘラしているとか、何も感じないというのは良くないことだと思います。成功体験を得ること、頑張った分の嬉しさが待っていることを知ることも必要ではあると思いますけど、でも、実際は本来の目的とは違う状況になってきているのは感じます」
とはいえ菊池は、筒香と同じことをしようとは思っていない。「これが正しいやり方だという答えはないと思う」と考えているからだが、それでも筒香が先頭を切って行動してくれていることに対しての思い入れは強い。
菊池が力を込めてこう話す。それは自身に対して、そして仲間たちへの呼びかけのようにも聞こえた。
「筒香は、後に続いてくれることを望んで会見をしているところもあると思います。全員が全員同じやり方でなくてもいいと思いますけど、行動しやすい環境を筒香が僕らに作ってくれたことは間違いない。扉を開けてくれたので、僕らが続かないと筒香に失礼だと思う」