大相撲PRESSBACK NUMBER
「部屋」視点で見るパワーバランス。
相撲界を次に騒がすのは誰なのか。
posted2019/02/08 08:00
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph by
Kyodo News
1年前に、翌年の初場所で玉鷲の優勝を予想できた人が果たしてどれだけいるだろうか? そして優勝を最後まで争ったのが貴景勝であることも、誰が予想できただろうか?
4横綱時代が遠い過去のように思えるほど、最近の大相撲は場所ごとに何かが起きている。世代交代かと思えば横綱大関が圧倒することもある。栃ノ心や玉鷲のようなベテランが開花することもあれば、御嶽海や貴景勝のような新世代の力士が台頭することもある。錦木や竜電のような中堅が一気に上位で結果を残すこともある。
つまり、「誰が」活躍するかを予想するのが極めて難しい状況なのだ。
では次に開花するのは誰か。そんなことを考えながら今場所の星取表を眺めていると、ふと気付いたことがある。
相撲部屋の勢力図が、明確に変化しているのである。
例えば少し前に日馬富士と照ノ富士を擁し、我が世の春を謳歌していた伊勢ヶ濱部屋は、最近でこそ苦戦を強いられているが、照強のような若手も台頭してきている。
高田川部屋は竜電に輝、十両を見れば白鷹山のような中卒叩き上げの大型力士達が揃って上位を窺っている。
追手風部屋は幕内の中位から下位にかけて大卒力士が多い。
部屋によって、入門者の傾向が違う。
相撲部屋にはそれぞれスカウティングに特徴がある。大卒が多い部屋もあれば、叩き上げに強い部屋もある。そして高校野球や大学駅伝にも似ているのだが、スカウティングには波があり、ある特定の時期に才能ある力士を集中して入門するケースがある。
若の里や隆乃若、隆の鶴らが同時期に台頭してきたかつての鳴戸部屋や、若貴に貴ノ浪、安芸乃島に貴闘力が上位を席巻した頃の二子山部屋はその好例だろう。
相撲部屋のスカウティングの特長と、どの部屋が幕下・三段目に有望な若手を抱えているかが把握できれば、大相撲の次が見えるかもしれない。
まずは現状分析からだが、初場所時点での関取人数を確認すると、大きく分けて3つの勢力が存在していることがわかる。外国出身力士、日本出身大卒力士、そして日本出身で高卒以下の叩き上げ力士である。それぞれ外国出身力士が15人、大卒が29人、そして叩き上げは27人である。
ただし、現状では移籍など特別な事情が無ければ外国出身力士は各部屋に1名までというルールがあり、外国出身力士だけで部屋を繁栄させることはできない。玉鷲の片男波部屋、鶴竜の井筒部屋、逸ノ城の湊部屋は外国出身力士が奮闘しながらも他の力士が台頭していないのが実情だ。
関取が1人となると、レベルに差が出るので稽古をするのが難しく、多くの場合は関取が出稽古に行くことになる。せっかく関取がいるのに部屋全体のレベルアップに寄与しづらいのは勿体ないし、有望な若手が別の部屋からスカウトされたらそちらを優先するのも致し方ないことだ。