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ここ10年、年度代表馬の半分が牝馬。
アーモンドアイたちはなぜ現れたか。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2019/02/09 10:00
まぎれもなく「現役最強馬」であるアーモンドアイ。凱旋門賞でエネイブルとの対決が実現したら……。
ノーザンファームのすさまじい手厚さ。
先月アップされた本稿にも書いたように、昨年は同牧場の生産馬がJRAの平地GI全24レースのうち16レースを制し、有馬記念では1着から4着までを独占した。
世界中から良血の繁殖牝馬を集めながら自前の牝系を発展させ、ディープインパクトをはじめとする超一流種牡馬を配合し、母馬のお腹のなかにいるときから徹底した飼養・運動などの管理を行う。
また、見過ごされがちなイヤリング(当歳時に離乳してから1歳時に騎乗馴致を始めるまでの期間)においても、20棟ほどある厩舎すべての放牧地に1頭ずつ「リードホース」と呼ばれる先生役の大人の馬を置くなど、怠りない。
育成馬となってからは、充実した施設と優れた人材によって走りの基礎を叩き込まれる。デビュー前の段階で、ノーザンファームの生産馬は、ほかを大きくリードしていると言っていい。
ケアの効果が牝馬の方が大きい?
また、レースとレースの合間を過ごすノーザンファームしがらきが2010年、ノーザンファーム天栄が2011年から稼働し、次走に向けた馬体とメンタル面のケアが前にも増して綿密に行われるようになったことが、近年の躍進の背景にある。
それも、心身ともにデリケートで、難しいところのある牝馬のケアには、特に効果があったのではないか。牡馬の場合、言葉は悪いが、多少手荒に扱われようが、優しく丁寧に扱われようが、それほど大きな差は出ないのかもしれないが、牝馬はそこが大切になってくる。牝馬は、ケアが入念になることの奏功度が大きい、と言うべきか。
心身のケアが綿密になされるようになったため、昔なら走る気をなくしたり、体がお母さんになる準備を始めて終わっていたかもしれない牝馬が、競走馬としての潜在能力をフルに引き出され、しかも長く現役をつづけられるようになった――と、ノーザンファームの生産馬に限らず、共通して言えるのではないか。