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今季未勝利の高梨沙羅が目指す高み。
「攻めすぎなくらい挑戦しないと」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2019/02/03 11:00
高梨沙羅は1月26日に行なわれたW杯ルシュノブ大会では3位に入るなど、表彰台に。
平昌から北京への試行錯誤。
技術のノウハウを持ち、なおかつ体格に恵まれた選手たちが台頭してきたことにより、小柄な高梨は助走スピードやパワーなどで苦戦を強いられている面がある。
以前は技術の高さでカバーしていたが、海外勢の進化によって技術も兼備した選手たちが出てくると、体格差が如実に表れてくる。
ではどうするか。答えは、さらなる技術の革新だった。
2015年度のシーズンから快進撃を見せた際も、スタートの修正を行なっていた。それまでは、ぽん、と小さく飛ぶようにスターティングゲートから離れていたのを、すーっと立ち上がるようにして足を助走路へ乗せるように変え、効果を上げた。
そして今シーズンも試行錯誤を繰り返している。助走のときの姿勢、出方など細かくチェックし最善を求めてきた。
この試みの根本には、平昌五輪がある。目標としていた金メダルを手にすることができなかったことで、2022年の北京五輪を視野に再スタートを切った。
「攻めすぎなくらい挑戦を」
そして今度こそ世界一になるには、このままではいられないとも感じた。
「攻めすぎなくらい挑戦しないと、変化はないと思っています」
だから助走を中心に、さまざまな面で見直し、改革を求めてきた。これまで身についたものをばらすのは、痛みを伴う。容易なわけでもない。また、いくら改革の途上と言っても、期待は集まる。多くの声援を受けた国内での試合では、こう口にした。
「勝たないといけないという焦りもあります」
何よりも、思うような結果を残せないことへの葛藤は、高梨自身が感じているだろう。それでも前を見据える。
「ジャンプをばらして組み直すことがテーマなので、それを中心にやっていきたいです」
あくまでも、今シーズンは五輪後の最初のシーズンであり、次のオリンピックへのスタートのシーズンである。4年をスパンに考えたとき、試行錯誤やチャレンジができる、失敗ができる1年でもある。リスクをとらなければチャンスも生まれない。