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「上司にしたい女性」マリリンは
カーリングの選手&指導者&敏腕GM。
posted2019/02/13 11:00
text by
竹田聡一郎Soichiro Takeda
photograph by
Shigeki Yamamoto
「新たな一歩ではあるけれど、何かに成功したわけではまだないです」
日本カーリング史上初の五輪でのメダルを獲得した昨シーズンの終わり、記者に囲まれ「自身が作り上げたチームが成功を果たしましたが」と促された時、本橋麻里は笑みを浮かべながらも毅然と、そう言い放った。
五輪でのメダルすら、まだ途上。そう考える本橋にとっての「成功」とは一体、どのようなものなのだろうか。例えば、単純に金メダルを獲得することなのか。
「それも目標の1つですね。来シーズン、ちょっと動こうと思っています。やりたいことはたくさんあるので、また話を聞いてください」
ロコ・ソラーレのメンバー全員に共通するいたずらっぽい口調で、そう激動のシーズンを締めくくった。2018年5月のことだ。
それからチームは2カ月前後のオフをとった。藤澤五月や吉田知那美は北米、鈴木夕湖は東南アジア、吉田夕梨花は札幌といった具合に、それぞれ中短期の留学や旅行のため、しばしアイスを離れた。
しかし、本橋は「家族で沖縄にちょっと行ったくらい。けっこうやることがあって」と、激動の五輪シーズンを完走した割に控え目なオフを過ごした。
チームがまだオフの最中、6月には選手として今季は休養することを発表し、「カーリングをしているとなかなか機会のない西日本に行く機会を得て、たくさん刺激をいただきました。地方の熱量はすごい」と全国での講演やカーリング体験会などのイベントに積極的に参加してきた。
同時にセカンドチーム「ロコ・ステラ」の人選など立ち上げの準備を進め、ロコ・ソラーレの4人がアイスに戻り、再び世界に挑み始めた夏の終わりには「ロコ・ソラーレ」を一般社団法人化し、自身は代表理事に就いた。
「なるべく多くの人に会う」という方針。
「社会人1年目のつもりで、不慣れながら精一杯やっていきます」
そう抱負を語った彼女の仕事を具体的に挙げていけば、まずはトップチーム「ロコ・ソラーレ」のフロント業務とチーム強化のサポートだ。JCA(日本カーリング協会)と折衝し、海外遠征のスケジューリングや現地での細かい手はずを整える。
安全にチームを送り出してから、新シーズン、2022年北京冬季五輪までの次の4年へに向けてのスポンサーさんへの挨拶回りも欠かさず、チームのビジョンを説いて回った。
平昌フィーバーでスポンサーに志願する企業や団体、CM出演のオファーなども激増したが、ブームではなく長いスパンでチームを、カーリングを応援してくれるオファーなのか、自身で判断したかったのだろう。本人は多くを語らないが「なるべく多くの人にお会いして、あらゆる意見を聞きたかった」とチーム強化、運営の最善策を今も探っている。