福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西崇史が悔やむカタール戦敗因。
ただ大迫&武藤の縦関係は機能した。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/02/02 14:30
前で収める大迫勇也が徹底マークされた時にどうするか。カタール戦はその課題を突きつけられた。
厄介なカタールの台頭。
攻撃に関しても前半の枠内シュートがゼロに終わったように、なかなか効果的なボールを入れられませんでした。
ボールの収めどころとしてキーマンとなる大迫も中央からサイドに動いてボールを受けようとするなど工夫が見えましたが、その大迫が空けたスペースに対して飛び出していく選手がいなかったですね。
またカタールの中盤3枚と5バックが日本にスペースを与えず、特に23番のアシム・マディボの寄せの速さに苦しめられました。その辺りで分厚い攻撃を仕掛けるための時間を作れず、時計が進んでいった印象です。
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ちなみに2016年にカタールで行われたリオ五輪アジア最終予選の際に、カタールの育成年代のトレーニング施設である「アスパイア・アカデミー」を見学しました。広大な敷地の元にピッチや様々な設備が充実していて、長いスパンで強化を図ろうとの意思を強く感じましたし、その育成が実を結んだと言えます。
実際にカタールと対戦してみると個人能力が高い上で、それだけに頼らずコンビネーションも向上してきたな、という印象です。アフィフとアリの2人だけでも崩しにいけるし、攻撃のバリエーションも豊富だった。再戦することがあれば日本も反省を生かして戦うはずですが、率直に言ってアジアで厄介な国が台頭してきたなとも感じます。
武藤と大迫の縦関係と役割分担。
話を試合に戻しますが、日本は90分間にわたってやられっぱなしだったわけではありません。
特に後半に入ってからはカタールを押し込み、実際に南野のゴールで1点差に詰め寄りました。大迫とのコンビネーションで抜け出したシーンがまさにそうですが、選手間の距離感を近くしてリズミカルにパスが通るようになってきました。そのきっかけは後半17分、武藤の投入にあったと思います。
武藤が大迫との縦関係となり、南野が左サイドにポジションチェンジしたわけですが、“相手の裏に抜ける武藤”と“相手を背負って収める大迫”という役割分担がはっきりしました。武藤の動き出しによってカタールの最終ラインを押し下げたことで、サイドにもスムーズにボールが入るようになりました。