ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
かつての開幕投手が中継ぎで復活。
DeNA三嶋一輝が失敗から学んだこと。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKyodo News
posted2019/01/24 11:00
2018年は中継ぎとして60試合登板、7勝2敗で15ホールドを記録した。
「自分は大丈夫なんじゃないかって」
昨季の復活は、不調のときであっても探求し積み重ねてきた練習がようやく結実したものだと本人は言うが、やはり精神面のウェイトはかなり大きかったと語る。
「いろいろ振り返ったんですよ。例えば僕は高校時代にプロに注目された後、腰を痛めてしまったんです。その怪我で評価を下げてしまった。大学に入って1年生のとき結果を出したのですが、
その後、結果が出なくなり自分はプロになれないんじゃないかと思ったこともありました。けど、4年生で結果を出しプロになることができた。そしてプロ1年目で結果を出したものの、その後は知っての通りです。
常に“波”があるというか……。言いたいことは本当にまずい状況であっても、どこかで自分は大丈夫なんじゃないかって気持ちがあったということ。失敗をしても、それを糧にして人間として深みが増せばいいって」
制球と球威のトレードオフ。
だが厳しいプロの世界。28歳の三嶋は、そんな悠長なことを考える立場にはなかった。
「どうにかなるではなく、自分のすべてをマウンドで表現する、見せつけるんだという気持ちで投げていましたよね」
チーム一番の負けず嫌いと評判の男は、一方で「自分ほど失敗してきた人間はいない」と自身を省みる。追い詰められ、気持ちの折り合いがついたことで、持ち前の反骨精神は三嶋に力を与えた。
昨季、三嶋を見ていて気づいたことがある。それはフォアボールの出し方だ。昨季三嶋は68イニング投げ、出したフォアボールは31個と少ないわけではないが、ランナーを出すことを恐れず大胆に厳しいコースに投げ込んでいる姿は印象的であり、それが躍動感のあるフォームやピッチングに繋がっているように感じた。
思えば三嶋はルーキーイヤーにリーグ最多となる79個のフォアボールを記録し、以降、制球を求めるがゆえ全体のバランスを失い不調に陥った過去がある。制球を気にするあまり球威が落ち、置きにいった甘いボールを被弾することが少なくなかった。