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かつての開幕投手が中継ぎで復活。
DeNA三嶋一輝が失敗から学んだこと。
posted2019/01/24 11:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Kyodo News
「まさか僕が“勝ちパターン”で投げるとは、誰も思っていなかったでしょうね」
横浜DeNAベイスターズの三嶋一輝は、そう言うと穏やかな表情を見せた。
3年ぶりのBクラスとなった昨季のDeNAにあって、三嶋は強烈な輝きを放った存在だった。中継ぎとして60試合に登板し、7勝2敗、防御率3.97。開幕当初は主にビハインドの場面を任されていたが、150kmを超えるストレートと切れのあるスライダーを武器に首脳陣の信頼を勝ち取り、ついにはチームに欠かせないリリーフとなった。
勝ちパターンを任されるようになっても、ビハインドや回またぎ、ワンポイントなど、三嶋はシーズンを通しいつ何時であっても堂々とマウンドに立ち続けた。
「全員を見返してやりたい。そういう気持ちでマウンドに立っていましたね」
かつてはDeNAの次期エースと目された選手だった。2013年のルーキーイヤーを6勝9敗で終えると、2年目には開幕投手に抜擢された。だがそれ以降、三嶋は調子を崩し芳しい成績を残せずにいた。結局、2年目から2017年までの4年間で、先発としてわずか7勝(8敗)しか挙げることができなかった。
意図的に壁を作って油断を防ぐ。
2017年のシーズン途中から中継ぎへ転向したが、近年の投球内容をかえりみれば評価は高いものではなかった。メディアや周囲からは「三嶋はもう厳しいのではないか」という声も少なからずあった。
当然、そんな風評は三嶋にも届いていた。
「聞きたくもない声は聞こえていたし、聞くたびにこの野郎って気持ちになりましたよね。だから昨シーズンは、一瞬でも隙を見せたらやられるのはわかっていたし、自分でずっと鞭を入れ続けているような1年でした」
中継ぎとして結果が出始めた春先、三嶋にコメントを求めると、ナーバスな風情を醸し出し、意図的に壁を作っているのがわかった。調子がいいからといって絶対に油断はしないという姿勢の表れだったのだろう。
「今日を抑えて、明日を掴もうって」
三嶋は噛みしめるように言った。
「今日打たれたら、明日は二軍に行かなければいけない。そんなプレッシャーを自分にかけていたし、この1年でもう投げられなくなってもいいやっていうぐらいの覚悟で挑んでいました」