福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西崇史がサウジ戦勝因に挙げた、
冨安健洋&吉田麻也のライン統率。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/01/22 17:00
決勝ゴールにラインコントロール。20歳ながら冨安健洋の攻守にわたる活躍ぶりはサウジ戦での一番の収穫だ。
水分補給ができないつらさ。
後半途中からは1点リードということもあって、早い時間帯から最終ラインを低めに設定していました。それでもそれぞれの距離感が間延びしないで90分間を戦い抜けていた。
とはいえ、ボールを持たれ続けたことによって時間が進むごとに疲れは見えてきました。自分たちのペースでボールを動かせていれば、ある程度緩急をつけて体力を温存する時間を作れたのですが……。
そしてじわじわと効いてくるのは、自分たちのボールでプレーを再開できないから、水分補給できないことなんです。気温は20度台中盤だったとはいえ、あれだけの直射日光を浴びて走らされると、体力は奪われる。そういう意味では自分たちでペースを握れず、疲労が溜まったんじゃないかなと感じます。
そんな苦しい展開の中でもディフェンスでミスらしいミスが起きなかったし、 ピッチ内で自分たちがやるべきことをやり続けました。もしも0-0のままだったらもっとリスクを負って攻めに行くシーンもあったでしょうし、思い描いたゲームプランとは違うかもしれませんが、球際で戦うことを最後まで貫きましたね。
課題はボールを奪った後の攻撃。
結果としてこういう戦い方で勝てたのは、グループステージの3試合とはまた別の手応えを得たんじゃないでしょうか。例えばトルクメニスタン戦やウズベキスタン戦では逆転勝ちをしたわけですが、上手くいかなかった時間帯があったのも事実。試合中に柔軟に戦っていくことも問われる中で、意思統一という部分で成長を感じさせました。
その一方で気になるのは、やはりボールを奪った後の攻撃の部分でしょうか。奪った瞬間は相手も奪い返しに来る。そこで奪おうと突っ込んできた相手をパスやドリブルでかわせば、一気に優位な局面に持ち込めます。ただその回数自体が少なかったのが、結果的に支配率の差につながったとも言えます。
サウジアラビア戦でそのシーンが見えたのは、後半15分、武藤がシュートまで持ち込んだシーンでした。武藤にパスを出したのは、右サイドにいた原口。原口が逆サイドを見て武藤に展開できたからこそ、一気にチャンスにつながりました。カウンターを仕掛ける際にはこういったシーンをどんどん増やしてほしいですね。