欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
サッリのチェルシーに漂う閉塞感。
負の連鎖の前に、いますぐ補強を。
posted2019/01/16 10:30
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Uniphoto press
スタンフォード・ブリッジに、ある男の姿が見えない。
メインスタンドの最上席に陣取り、ゴールや好プレーには惜しみない拍手を送っていた。失点したり、イージーなミスでピンチを招いたりすると、失望と落胆の色を隠さなかった。
チェルシーのオーナーを務めるロマン・アブラモビッチ氏は、どこに姿を隠しているのだろうか。
昨年4月下旬に失効したとされる投資家用のビザは、年が明けたいまも更新できていない。スパイ疑惑に端を発する英国とロシアの外交的緊張が、アブラモビッチ氏にも大きな影響を及ぼしている。モスクワ、チューリヒ、ニューヨーク、モナコに渡航した事実は確認されているものの、ロンドンには9カ月近くも降り立っていない。
当然、チェルシーのオーナー業務に支障をきたす。電話やメールで事足りるケースもあるとはいえ、面と向かって話すべきテーマも少なくはない。
憶測とアブラモビッチの沈黙。
こうした状況は憶測を生み、「アブラモビッチ氏がチェルシー売却を決意!?」と、派手な見出しを打つタブロイド紙も現れた。タブロイド紙の報道が浅はかで、内容が取るに足らないものだと分かっていても、目にした選手、サポーターは不安にかられる。
「オーナーはチェルシーを売る気なのか!?」「この先どうなるんだ!?」
気持ちは後ろ向きになる。アブラモビッチ氏がスタンフォード・ブリッジで、あるいはSNSを通じて「チェルシーは永遠に売らない」とでも発信すればすべてが円く収まるのだろうが、彼は沈黙したままだ。
売る・売らないをテーマに設けた場合、冬の市場の動きもあやふやだ。エデン・アザールはレアル・マドリーに対する憧憬を隠さないまでも、「この冬は残留する」と奥歯にものが挟まったような発言だ。