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サッリのチェルシーに漂う閉塞感。
負の連鎖の前に、いますぐ補強を。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byUniphoto press
posted2019/01/16 10:30
メンバー固定化の弊害が出つつあるチェルシー。アザールを留まらせるだけの補強策に打って出られるのか。
現有勢力では無理がある。
ドルトムントから獲得したクリスティアン・プリシッチは古巣に一旦レンタルし、セスク・ファブレガスはモナコに移籍した。アルバロ・モラタがセビージャに去り、代わってミランからゴンサロ・イグアイン獲得との報道も信ぴょう性に乏しい。
ミヒー・バチュアイがレンタル先のバレンシアから戻ってくる、という噂もインパクトが薄すぎる。昨年夏、構想外となった男が復帰したところでサポーターが喜ぶはずはない。実現したとしても員数集め。窮余の一策だ。
現有勢力では無理がある。マウリツィオ・サッリ監督がみずからのチームに自信を持っていたとしても、いずれ過信と気づくに違いない。実績と経験で上まわるジョゼップ・グアルディオラ監督(マンチェスター・シティ)、ユルゲン・クロップ監督(リバプール)でさえ、就任1シーズン目はこんな感じで舌を巻いていた。
「プレミアリーグのプレー強度は凄まじい。普通なら2~3日、少なくとも1週間あれば体力は回復するが、この国では10日、2週間、いや、それ以上かかる場合もある」
カンテは相変わらずタフだが。
案の定、チェルシーの動きは落ちてきた。トランジションが遅れ、全体のバランスが崩れる。開幕から8勝4分無敗はハイペースが過ぎたのだろうか。第13節でトッテナムに敗れた後は、レスターやウォルバーハンプトンにも屈し、シティ戦の2-0での勝利を台無しにした。
追いつかれたり、逆転されたりした後の焦燥感はプレーにも表われ、サッリ監督が「原因不明」と嘆くほど慌てふためいている。いま、チェルシーは明らかに行き詰った。
メンバーの固定化により、数人の選手が疲弊している。プレミアリーグでは皆勤賞のセサル・アスピリクエタは、彼らしからぬイージーミスが少しずつ増えてきた。出ずっぱりに近いマルコス・アロンソはスピードについていけないシーンも目立つ。
アントニオ・ルディガーはポジショニングで後れをとり、ジョルジーニョは頻繁に消され、そして消える。運動量が落ちていないのはエンゴロ・カンテただひとりだ。77分にマテオ・コバチッチと交代したウォルバーハンプトン戦(第15節)を除くプレミアリーグの全試合にスタメンフル出場しながら、常にピッチ全域をカバーしている。恐るべきタフネスだ。