欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
内田や柳沢が感じる日本と海外の差。
シャルケはなぜ炭鉱に敬意を示すか。
posted2019/01/05 10:00
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph by
Getty Images
シャルケのホームスタジアム、フェルティンス・アレナで行われる試合で、選手入場のシーンをご覧になったことがあるだろうか。
選手たちは炭鉱の坑道を模した通路を通ってスタジアムに登場する。黒く装飾された通路はピッチよりやや低く、そこから上ってピッチに出るという、鉱山から外に出るイメージで作られている。
試合前にスタジアムアナウンスと観客で叫ぶシャルケの合言葉「Gluck Auf(グリュックアウフ)」は、「無事に地上へ!」という、炭鉱夫にかけられた言葉だ。
シャルケのホームタウンであるゲルゼンキルヘンはかつて炭鉱の町だった。炭鉱夫たちに支えられたクラブだったことから、シャルケは地域の象徴として炭鉱との関わりを今でも大事にしている。
シャルケでは育成組織のことをDie Knappen(若い炭鉱夫たち)と呼ぶのも、その名残だ。
ドイツ最後の炭鉱山が閉山。
去る12月21日、そのゲルゼンキルヘン近くのボトロップで操業していたドイツ最後の無煙炭鉱山が閉山した。ルール工業地帯の一角をなし、200年の歴史を誇る石炭産業がついにその歴史に幕を下ろしたのだ。
シャルケでは、このボトロップのプロスペル・ハニエル鉱山に選手たちが炭鉱見学にいくということを定期的に行っており、'17年1月には当時在籍していた内田篤人も地下1000mの現場に足を踏み入れている。
その鉱山の閉山にあたり、シャルケは19日のレバークーゼン戦に2000人の炭鉱夫を招いた。シャルケと同じルール地方がホームのドルトムントも、21日のボルシアMG戦で「Danke Kumpel!(鉱夫たちありがとう!)」と書かれたユニフォームを着用した。