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人生に効く「棚橋弘至のプロレス」。
1.4東京ドームで私達は何を目撃する? 

text by

行成薫

行成薫Kaoru Yukinari

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photograph byEssei Hara

posted2019/01/03 10:00

人生に効く「棚橋弘至のプロレス」。1.4東京ドームで私達は何を目撃する?<Number Web> photograph by Essei Hara

IWGPヘビー級タイトル8度目の戴冠を目指す棚橋弘至。膝の調子も良いらしく、約3年ぶりの返り咲きを狙う。

人生の挫折に効いた“棚橋のプロレス”。

 私事ではあるのだが、筆者はここ2年ほど自己免疫系の疾患に悩まされている。免疫が自分の体を攻撃して、顔や体の皮膚が破れてしまう。また、服用する薬の副作用で顔や体が著しくむくみ、人前に出るのもはばかられる状態である。棚橋の膝と同じく、一生背負っていかなければいけないものだ。自宅に引きこもらなければならない生活に、筆者は挫折感を強く味わった。

 その挫折感を前向きな感情に変えてくれたのは、“棚橋のプロレス”であった。

 昨年夏のG1クライマックス、復活を遂げた棚橋の姿は、筆者に大きな感動を与えてくれた。度重なるケガを乗り越え、「以前のようには動けない」という事実までも呑み込んで展開したプロレス。飯伏を相手に一歩も引かず、誰もが納得する勝利をもぎとった。

 自分も倒れたままではいられない。現実を呑み込まなければならない。そう感じた筆者は、オリジナルのプロレスマスクを作成し、新たな自分の「顔」とすることにした。文字通りの「覆面作家」になろうというわけである。悪ふざけのように見えるかもしれないが、自分なりに立ち上がろうと考えた結果だ。

 そして、プロレスとは、本来そういうものではないか? と、筆者は思う。

 倒れても、はいつくばっても、何度でも立ち上がるレスラーの姿に、ファンは勇気づけられるのだ。

「アスリート型プロレス」とは?

 ケニーのプロレスは、類稀な身体能力と圧倒的なセンスによる、「アスリート型プロレス」だ。

 創造性豊かな技で観客の度肝を抜き、息もつかせぬハイスパートの連続でインパクトを与える。スリリングかつスマート。現代プロレスの最先端と言ってもいい。残念ながら、同じ土俵で戦っても棚橋に勝ち目はないだろう。

 だが同時に筆者は、ケニーのプロレスは「観客の人生の延長線上」にあるものではないようにも感じるのだ。

 つまり、独創性とクオリティに感動することはあるのだが、自分とケニーの姿を重ねて共感をおぼえることはあまりないのではないか、ということである。

【次ページ】 輝き続ける一番星のケニー。

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