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人生に効く「棚橋弘至のプロレス」。
1.4東京ドームで私達は何を目撃する?
posted2019/01/03 10:00
text by
行成薫Kaoru Yukinari
photograph by
Essei Hara
年を越し、日本列島は正月ムードだが、プロレスファンたちの視線はある舞台に向いているかもしれない。毎年、年明け1月4日は特別な日だ。
レッスルキングダム13 in TOKYO DOME。通称“イッテンヨン”である。
すでに魅力あふれる対戦カードが発表されているが、やはり、一番の注目はメインイベントだ。伝統のベルトを懸けたIWGPヘビー級選手権試合、王者ケニー・オメガvs.棚橋弘至。
巷ではどうやら、「新旧イデオロギー対決」という位置づけになっているらしい。新日本暗黒期から現在の繁栄を作り上げてきた棚橋弘至のプロレスと、新時代のスタイルを切り開こうとするケニーのプロレス。どちらがこれからの新日本にとって「正しいスタイル」なのか、という見方である。
昨年の新日本プロレスは、激動の一年だった。
年初のイッテンヨン・東京ドーム。メインイベントのIWGPヘビー級選手権試合を制したのはオカダ・カズチカであった。だが、東京ドームを満員にしてやると豪語した男は12回防衛したベルトを失い、2019年のイッテンヨンを無冠で迎える。オカダからベルトを奪ったのは、現王者のケニーだ。
団体が海外進出に力をいれたこともあってか、昨年は外国人レスラーたちの台頭が目立った。ここ数年、新日を牽引してきたオカダや内藤がその勢いに呑まれ、トップ争いは混迷を極めている。だが、その外国人旋風が吹き荒れるトップ戦線のど真ん中に、突如燦然と返り咲いたレスラーがいる。我らがエース、棚橋弘至である。
昨年のイッテンヨン、ジェイ・ホワイト戦の棚橋はコンディションの悪さが目立った。エゴイスティックなジェイのスタイルとの噛み合わせの問題もあったが、やはり不完全燃焼感は否めなかった。案の定、その後は膝の悪化で戦線を離脱。ここ数年続く負傷欠場の流れがまた、と、ため息をつくしかなかった。
だが、ケガから復帰後の棚橋は、驚異的な勢いでエースのポジションへと戻ってきた。夏のG1で優勝すると、レッスルキングダム(WK)13東京ドームのメインイベンターの地位も死守した。プロレス以外でも、映画主演、テレビ出演などで話題をかっさらい、ついにはプロレス大賞MVPにも輝いた。ジェイ戦の出来から考えると、ありえないほどの復活劇である。
昨年初めの段階で、ケニーvs.棚橋のメインイベントを予想できた人は、どれだけいただろうか。それだけ、新日本プロレス内の状況は、たった一年で大きく様変わりしたわけである。