プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
蘇った新日本プロレスのエース。
棚橋弘至は2019年も輝けるか?
posted2018/12/22 10:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
2019年1月4日、東京ドーム。
そのメインイベントであるIWGPヘビー級の王座戦に、挑戦者として棚橋弘至がいる……ということを想像することすら困難な時期が、今年はあった。
少なくとも8月のG1クライマックスが終わるまでは、わずかな望みこそあったにせよ、挑戦できるという可能性は棚橋自身の頭の中にある「願い」に近い、想像のうちに過ぎなかったように思う。
この間、ボロボロに朽ちて果てていく、まるで見知らぬ「物体」のようになってリング下にうずくまっている棚橋の姿を、目に焼き付けるかのように私はずっと見てきた。
棚橋が、せめて気持ちだけは高めようと奮闘する姿を見ても、そこには悲壮感しか残っていないように感じられた。
動けないプロレスラー。
ケガでリングに上がれないプロレスラー。
棚橋には、いつしかそんなイメージが付きまとうようになっていた。
もう棚橋の時代は終わったのか……。
IWGP戦線から長く遠ざかっていた男が復活への名乗りを上げたのは、4月1日の両国国技館だった。
だが、当時の王者オカダ・カズチカはあまりにも強すぎて、棚橋がオカダを倒してIWGP王座に返り咲く姿は、誰もイメージすることすらできなかった。
熱狂的な棚橋のファンですら、彼がIWGP戦に戻ってきたことそのものはうれしかったが、戴冠するという高望みまではしないよう、気持ちを抑えていたはずだ。
5月4日にIWGPヘビー級タイトルマッチが行われた福岡国際センターでは、「祈り」のようなタナハシ・コールが沸き上がっていた。その時は、棚橋のファンでなくても思わず叫んでしまいたくなりそうなくらい熱狂的な雰囲気が、実際にあったのだ。
棚橋にとって、もしかしたら最後になるかもしれないIWGPをめぐるオカダとの戦い……絞り出すような気力と気迫でオカダを追い込んだ棚橋だったが、結局、戴冠の夢はかなわなかった。
この時、リングを去る棚橋は、まるで本当に燃え尽きてしまったように、私の目には映った。