濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
弱小団体ガンプロ、後楽園再進出!
立役者となった“場末のMr.プロレス”。
posted2018/12/21 10:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
DDT Pro-Wrestling
大家健(おおか・けん)率いる「ガンバレ☆プロレス」が、12月16日に後楽園ホール大会を開催した。旗揚げから5年余り、これが2度目の“聖地”進出である。
通常の観客動員は100人から300人といったところ。収容人数100人以下の小さな会場が札止めにならないこともある“どインディー”団体だ。弱小、極小、しかしスローガンだけは「プロレスをメジャースポーツに」と威勢がいい。
過去に失踪騒動を起こしたこともある代表の大家をはじめ、ガンバレ☆プロレス(通称ガンプロ)参戦選手には何かしらの挫折を経験した者、紆余曲折を経てこのリングにたどり着いた者が多い。
今年“今成革命”を掲げて大家に反旗を翻し、夏のトーナメント『ガンバレ☆クライマックス』で優勝した今成夢人はDDTの映像スタッフ兼レスラーだ。
美術大学を出てテレビ局に就職したが、制作の仕事に就けず鬱憤をためるだけためて会社を辞めた過去がある。
大家にとっても今成にとっても、リングは闘いの場であり自己表現の場であり、何より自分の人生を叩きつける場所だ。12.16後楽園のメインイベントで大家と対戦した藤田ミノル(フリー)にとっても、リングは人生そのものに直結する場である。
離婚をリングで告白……藤田ミノルの生きざま。
かつてプロレス界の最前線で活躍し、プロレス大賞の最優秀タッグ賞を受賞したこともある藤田。女子レスラーだった妻とのあいだに2人の娘ができ、一時期は福岡で暮らしていた。「時給の仕事」をしながら専門学校に通う生活を送っていたのだ。「免許を取って接骨院の先生にでもなれば、まあ死ぬまで働くことはできるよな」。
すべては家族のためだった。プロレスは「片手間」程度に留めるつもりだった。しかし「片手間でやってるプロレスが楽しすぎて」学校を留年してしまう。さらに「奥さんにとっては、俺はしこたま浮気をしてたらしい。プロレスの浮気、本当の浮気。どっちもそうかもしれねえな。気が付いたら、俺はパチンコ屋の寮に1人で住むことになってたよ」。