“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
高校で無名の東海学園大トリオが、
風間グランパス内定を得た技術力。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/12/19 07:00
4人のJ内定を出した東海学園大。インカレの集合写真では欠場の渡邉のユニフォームとともに写真に収まった。
渡邉の不在が痛かった。
敗因はフィニッシャーの不在だった。榎本と児玉が相手を引きつけて打開した後に、3人目の動きで関わってゴールに結びつける。
その役割を果たすはずの選手こそ渡邉だった。
渡邉の不在は、あまりにも痛かったのだ。
「上で戦うためには仕掛ける意欲が必要な一方、周りが上手いのは当たり前でもあるので。なので、周囲を陵駕する技術が必要だと思っています。後輩達にも“チームプレーはものすごく大事だけど、まずは自分自身の技術を向上させないと上には行けない”と伝えたいですからね。
僕自身は技術の向上だけでなく、もっとサッカーを学ばないと、と思っています。この大学で技術の活かし方など深い部分を知ることができました。まずポジショニングで相手の嫌な位置に立ったり、ターン1つでも相手との距離感を確かめながらプレーするとか、そういう受ける前のプレーもかなり意識するようになりましたから」
試合後、榎本は涙を見せることなくハキハキと語った。そこには4年間で得たものへの充実感と、プロ入り後の意欲がにじみ出ていた。
「正直なところ、安原さんに育ててもらったから、もっと上に勝ち上がって感謝の意を伝えたかったです。でもそれが実現できなかったからこそ、僕らがプロで安原さんのサッカーを表現したいと強く思います」
涙を流した児玉にも信念が。
一方で、大学生活が2年間残されている児玉は涙を流し、タオルを頭からかけた状態でしばらく立ち尽くしていた。
「4年生には本当にお世話になったので、勝てなかったことが本当に悔しい……」
榎本とは対照的に消え入りそうな声で語り出したが、その奥には榎本と同様の強い信念があった。
「僕は……純粋に上手くなりたいんです。リスクは大きいかもしれないですが、大学2年生の段階で、グランパスで特別指定選手としてJリーグを経験することで、自分のレベルアップにつながると思ったので決断しました」
前述したように児玉はまだ大学2年生である。彼の名古屋内定が発表された時は、驚きの声も多かった。だが、それに対して一番の理解を示したのが、先輩である榎本だった。
「上手い奴が上に行くのは当たり前だと思っています。駿斗はいい選手なので、もっと上手くなってチームを救える選手になって欲しい。
結局、上手い選手がサッカーをやっていないとつまらないというか、上手い選手がピッチに立つべきだと思っているし、そのためには自分がどうすれば良いかを突き詰めて行きたいと思っているので。僕が目指している所はそこにありますから」