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J1あと一歩まで迫ったロティーナ。
ヴェルディを去る智将に見た教養。 

text by

海江田哲朗

海江田哲朗Tetsuro Kaieda

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photograph byGetty Images

posted2018/12/13 10:30

J1あと一歩まで迫ったロティーナ。ヴェルディを去る智将に見た教養。<Number Web> photograph by Getty Images

ヴェルディで2年間を過ごしたロティーナ監督。スペイン帰国後、地元紙に来季も日本で指導する意向を示したという。

J1とJ2のレベル差と育成論。

 J1とJ2を隔てるレベルの違いに関し、次のように話した。

「限られたスペースと時間で、どのようなプレーができるか。カテゴリーが上になるほど、その差は明確になっていきます。J1のプレーヤーは、狭い空間で考える時間がほとんど与えられない状況であっても、まるで広いところでやっているように的確なプレーを選び取れる」

 こうして、だいたい試合の2日前に行われていた囲み取材は、延べ100回を超える。短いときで5分、時には20分近く話すこともあっただろうか。

 あるときは、選手の育成に関する持論を述べた。

「若い選手の将来は予測できないもの。成長は継続性から生まれます。大きな成果は、1カ月や1年では到底つかめません。才能やタレント性は重要ですが、同時に姿勢や取り組み方が大事になってきます。生活面を含め、いかに自分を管理できるか。よりサッカーが巧くなりたいと欲すること、望み続けることが大切です」

小さな幸せを楽しめる年齢に。

 また、あるときは監督業の宿命について。

「どの監督でも解任されるときは理不尽な思いを抱くもの。それは人間的につらい経験です。よい仕事ができていないと他者から見なされることですから。もっとも、そのこと自体は何も特殊ではなく、新聞記者、エンジニア、どの仕事でも同じですね。サッカーの監督だけが特別ではありません」

 昨年、自身が還暦を迎えたときは、こんな話を聞かせてくれた。

「人生ではどの年齢においても、よいことと悪いことがあります。年を重ねると、自分にとって本当に大事なものがわかるようになりますね。若いときは、心配事が多いものです。仕事について心配し、子どもの教育について心配する。

 年を取ると、心配事があっても落ち着いて考えられるようになり、より小さなことに喜びを見出せるようになる。若いときは、その小さな幸せに気がつかないものなんです。小さなことを評価できず、大事にできない。私はそれを慈しみ、楽しめる年齢になりました」

【次ページ】 歴史小説から学べること。

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ミゲル・アンヘル・ロティーナ
東京ヴェルディ

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