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J1あと一歩まで迫ったロティーナ。
ヴェルディを去る智将に見た教養。
posted2018/12/13 10:30
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
Getty Images
ロティーナ監督がベンチの前を落ち着かない様子でうろうろしている。戦況は芳しくなかった。
12月8日、J1参入プレーオフ決定戦。41分、東京ヴェルディはジュビロ磐田にペナルティキックで先制を許す。誤算だったに違いない。2017年、ロティーナ監督の就任以降、チームはリスク管理が徹底され、被PKは2年間でたったの1回。2回目がよりによってこのタイミングで訪れた。
後半、ロティーナ監督は立て続けに交代カードを切り、反転攻勢を試みる。だが、流れを大きく変えることができない。
両チームの違いは明白だった。山田大記、大久保嘉人、田口泰士、アダイウトン、磐田の選手たちは名札の付いたプレーをしていた。日本代表キャリアの肩書きや、知名度の問題ではない。誰が見ても、プレーの固有性がわかるということだ。全国的には無名の右サイドバック、小川大貴もそのひとりである。
80分、田口の直接フリーキックで追加点を奪われ、東京Vは力尽きた。シュート数は磐田の13本に対し、東京Vは2本。完敗だった。
「J1に上げる夢は……」
明けて9日、東京Vはロティーナ監督とイバンコーチの退任を発表する。
同日午前、クラブハウスを去るロティーナ監督は、集まったメディアを前にこう語った。
「率直に言って、私の夢はチームをJ1に上げることでした。そのために私はイバンとともにやってきたのです。われわれがよい仕事をできる条件のひとつに、アシスタントスタッフのサポートが挙げられます。
この2年間、彼らはとても質の高い働きを見せ、助けてくれました。また、選手たちも向上したい意欲に溢れていました。残念ながら、夢は叶えられませんでした。ただ、目標に向かう過程は美しいものだったと思います」