スポーツ百珍BACK NUMBER

ミシャはなぜ札幌で愛されるか。
北海道にはロマン主義がよく似合う。 

text by

茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

PROFILE

photograph byJ.LEAGUE

posted2018/12/04 07:00

ミシャはなぜ札幌で愛されるか。北海道にはロマン主義がよく似合う。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

理想を掲げ、成績まで叩きだしたミハイロ・ペトロヴィッチ監督に対して、札幌サポの支持率は圧倒的だ。

札幌ドームは称えるムードだった。

「『2-1でリードしているけど、自分たちが受けに回らず点を獲りにいこう。相手に脅威を与えよう』。ハーフタイムにはそんな話をしました。しかし後半の比較的早い段階で失点してしまいました」

 試合後のミシャ監督の弁である。

 押されているなら押し返せという果敢な姿勢。やはり一歩間違えば完全に瓦解する危うさと隣り合わせの言葉で、選手を送り出していた。

 しかし3万4000人以上の大観衆が詰めかけた札幌ドームに落胆ムードはなく、むしろ拍手で健闘を称えるムードに包まれていた。

 当然だろう。チームはすでに第33節終了の時点で、J1で史上最高となる4位以上を確定させていた。そして天皇杯の結果次第では、ACLへの挑戦権も残っているのだから。

なぜこんなに受け入れられているのか。

 ただその結果以上に、ミシャという人間性が札幌、北海道という地域に想像以上に馴染んでいる印象を受けた。

 例えば当日の地元スポーツ新聞は、1面で「歴史刻む ミシャ札幌」と大きく扱っていた。都倉やジェイ、東京五輪世代の三好康児らといった看板選手ではなく、決戦に向けて嬉しそうな表情を浮かべるミシャがでかでかと載っていた。

 サポーターやファンもクラブもミシャスタイルに共鳴している。試合には「攻めて攻めて攻めて攻めて……」という文字を何回も繰り返し、最後に「攻めまくれ!!」と締めた横断幕が掲げられた。そして“無理攻め”に見えるパワープレーの場面でも、札幌ドーム全体が手拍子を送っていた。

 この信頼感はどこから生み出されているのか、と思った。

 ミシャは2006年に来日して以降、足掛け13シーズンも日本での指導を続けている。もしこれが来日1年目で札幌を躍進させたなら「斬新な可変式サッカー」ともてはやされ、大きな支持を受けるだろう。

 ただ広島、浦和と率いたことで目新しさは徐々に薄れてきてるし、今回の広島戦のように、相手の対応にハマってしまうと挽回は苦しいという認識も広まっている。それでも、ミシャを温かく受け入れているのが興味深く映った。

【次ページ】 北海道はロマンチシズムの土地?

BACK 1 2 3 4 NEXT
#ミハイロ・ペトロヴィッチ
#北海道コンサドーレ札幌

Jリーグの前後の記事

ページトップ