スポーツ百珍BACK NUMBER
ミシャはなぜ札幌で愛されるか。
北海道にはロマン主義がよく似合う。
posted2018/12/04 07:00
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
J.LEAGUE
やっぱりミシャって、ロマンチストすぎるから「あと一歩」なんだろうか――。
札幌ドームに2018シーズン最後のタイムアップの笛が鳴り響いた瞬間の本心である。
ミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督が率いる北海道コンサドーレ札幌。最終節の相手はサンフレッチェ広島だった。第33節時点で2位につける広島は勝ち点56、それを追う4位・札幌は勝ち点2差の54。勝てば自力でクラブ史上初となるACL出場権を手中にする決戦となった。
この日、キックオフから25分間の札幌は極上のエンターテイメントだった。
可変システムの特性を生かしたサイドチェンジを起点に、複数人が連動して奪ったチャナティップの先制点。そして後方でボールを動かしてから背後へのロングボール1本で広島守備陣を混乱させ、ジェイが35mもの距離からループシュートを決めた追加点。どちらもファインゴールだったし、ゲーム全体で見ても圧倒的に広島を押し込んでいた。
攻め続けるスタイルの魅惑と脆さ。
だが、その高揚感は長く続かなかった。
広島の城福浩監督がこの日のために採用した3-4-2-1システムは、時間を経るにつれて落ち着きを取り戻す。それとは対照的に、札幌の攻撃はパワーダウンした。
気づけば後半7分の時点で2点リードは消えていた。焦り始めた札幌は後方からのビルドアップにミスが生まれ、相手カウンター時には中盤のフィルターが利かないどころか最終ラインのど真ん中がガラ空きになってシュートを浴びる。ク・ソンユンのビッグセーブがなければ、広島の一方的な展開になっていてもおかしくなかった。
終盤、ジェイに加えて切り札の都倉賢、そしてDFのキム・ミンテも前線に上げるパワープレーは状況を打開する可能性を感じさせた。ただそれ以上に、城福監督が投入した広島のパトリックが、ほぼ“1バック”状態の宮澤裕樹をこじ開ける可能性の方が高く見えた。
実際には、試合は2-2のままタイムアップ。受けるのではなく、攻め続けるのみ――そんなスタイルの魅惑と脆さが、90分間でくっきり浮かび上がった。