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横浜FC、J1への道は断たれても。
「やり切ったので悔いはないです」
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/12/03 17:50
横浜FCの手がJ1に届くことはなかった。しかし、リーグ戦を3位で戦い抜いた実力は偽者ではない。
ゲームプランは完璧に遂行したが。
結果だけが求められる一戦、敗れた横浜FCには何も残らないのかもしれない。だが、それでも彼らはいいゲームをしたと思う。
今季の横浜FCは、レギュラーシーズンの2試合で東京に1分け1敗と負け越した。だがGK南雄太は試合後、「守りがハマらなかった2試合に比べて、この一戦では完全に守備が機能した」と振り返った。
実際に、狙い通りのゲームをしたのは横浜FCだった。
3バックはGK南も含めて冷静にパスを回してリズムを作り、ボールへの出足でも東京を上回った。自陣のスペースをしっかりと消して、カウンターからゴールに迫る。
後半立ち上がり、東京はレアンドロと梶川諒太のふたりを投入して、一気に勝負をかけてきたが、それでも横浜が主導権を失うことはなかった。多少、受け身になっても守備陣はバランスを保ち、球際の攻防でも引けを取ることはなかった。
とくに目を引いたのが、FWイバの献身的な働きだ。29分の決定的なヘッドはポストを叩き、ゴールを決めることはできなかったが、労を惜しまず中盤の守りに参加してピンチの芽を摘み取った。エースが汚れ役を進んで買って出たことで、チームの士気は高まった。
泣き出す選手、さばさばした選手。
7分という長いアディショナルタイムでも、先に決定機を迎えたのは横浜FCだった。しかも2度も。そのうちひとつでも決めていたら、私はいまごろ「横浜は完璧なゲームを遂行した」と書いていただろう。しかしゴールは決まらず、96分のCKですべてがひっくり返った。「これがサッカー」としかいいようがない幕切れだった。
試合後、横浜FCの選手たちは多くが敗戦のショックから立ち直れず、しゃべっているうちに泣いてしまう選手もいた。だが、さばさばした選手もいた。レアンドロ・ドミンゲスの代役として、スタメン出場を果たした野村直輝だ。
前線からの守備とセットプレーのキッカーを任された彼は、身を粉にして働き続けた。労を惜しまず敵のボールを追い続け、ボールを持ってもプレッシャーを怖がらずに溜めを作って、味方の攻め上がりを引き出した。
80分で交代を余儀なくされたが、この試合の重みを引き受けて堂々とプレーした。