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初優勝の貴景勝を支えた新師匠夫妻。
おかみさんが語る新生・千賀ノ浦部屋。
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKyodo News
posted2018/12/03 11:00
初優勝の貴景勝を囲んで。右端におかみの留美子夫人、その隣が千賀ノ浦親方。千賀ノ浦部屋の公式ツイッター(@chiganoura_beya)はファンの間でも大人気。
「自分が引き受けないといけない」
急遽、貴乃花部屋の力士8人を受け入れることとなった千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は、病気休場した審判親方の代行も引き受け、今場所はさらに多忙を極めることになった。
「ドラえもん」にも似た、福々しい丸い笑顔がトレードマーク。貴景勝の快挙には、この新師匠の存在も大きかったのだろう。
貴乃花部屋の力士たちを受け入れるに当たり、「親方も私も、引き受ける以外に選択肢はありませんでした」と留美子夫人が述懐する。
「親方は、『自分が引き受けないといけない。お相撲さんたちの行き場がなくなってしまうのは、あってはならないことだから』と。悩むこともなく答えはひとつだったんですが、それでも『責任があることだし、まとめていけるのか』と、いろいろ考えることもあったのでしょう。珍しく考え込んでいる時もあったので、『今の気持を書いてみたら?』と、勧めてみたんです」
半紙と筆を取り出した親方がしたためた言葉は、「どの子も我が子」。
この書がツイッター上で公開されると、「本当に安心しました!」などと大きな反響を呼び、動向を懸念する相撲ファンをも安堵させた。
“オアシス”と呼ばれていた隆三杉関。
「この言葉に親方の気持が表れていたと思います。もともと貴乃花部屋の部屋付き親方として指導をしていましたし、そこは気心も知れていました。
妻がいうのもなんですが、本当に優しくて善意の塊のような人なんですね。今でも親方の弟弟子だったOBと集まる機会があるんですけど、彼らが言うには『僕たち弟弟子のあいだでは、隆三杉関のことを陰で“オアシス”と呼んでいたんですよって(笑)』」