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初優勝の貴景勝を支えた新師匠夫妻。
おかみさんが語る新生・千賀ノ浦部屋。
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKyodo News
posted2018/12/03 11:00
初優勝の貴景勝を囲んで。右端におかみの留美子夫人、その隣が千賀ノ浦親方。千賀ノ浦部屋の公式ツイッター(@chiganoura_beya)はファンの間でも大人気。
“土俵の鬼”の弟子だった親方。
かつて“土俵の鬼”と呼ばれた、横綱・初代若乃花の弟子だった。
厳しい師匠のもと猛稽古に明け暮れる当時の二子山部屋で、隆三杉――千賀ノ浦親方の笑顔と優しさは、まさに“砂漠のなかのオアシス”だったようなのだ。
現役引退後は貴乃花部屋に所属し、貴景勝らを指導していたが、今から2年前の4月、先代千賀ノ浦親方(元関脇舛田山)の定年退職まで2週間を切った頃、急遽、一門を超えて部屋を継承することになる。
この当時の留美子夫人は、部屋継承を夫に打診され、「いいよ」と一言、承諾したという。「それまでは夫婦ふたり、自由でラフな生活を送っていたので、身が引き締まりましたけれど」と語っていたのを思い出す。
「親方は、毎日、朝からニコニコ」
「正直言いますと、この時も、やはりうちの親方が継がないと部屋が空中分解してしまうかもしれない――とのことだったんです。お相撲さんたちの行き場が無くなってしまうのだけは避けなければ、との思いでした。
この2年半、やはり最初は慣れませんでしたけれど、だんだんと親方やおかみである私の人となりや性格が伝わったのでしょうか。もともとが浅草にある少人数の相撲部屋でしたので、みんなでもんじゃ焼きを食べに行ったり、カラオケに行ったりして和気藹々。
親方は、毎日、朝からニコニコしていて感情的に機嫌が悪いことって、長い結婚生活のなかでも1度もないんですね。もちろん稽古は厳しいですけど、プライベートではお相撲さんたちをリラックスさせてあげようと思っているようなんです」