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J2優勝でも反町監督はニヒルだった。
シャーレ掲揚拒否と松本山雅の未来。
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/11/30 16:00
反町監督はニヒルだが情に厚い。歓喜のアルウィンで「アルプス一万尺」を踊る場面も。
結局シャーレを掲げたが。
指揮官らしいと言うべきか、そのように問題点も摘出しながら、少し前向きにも見据えていた。
優勝は偶然も重なったが、2位以内でJ2昇格を果たしたことは、ある程度、納得している。それができる力はあったと、反町監督は自負していた。
とはいえ、それがJ1で通じるかは分からない――むしろ現状では厳しいだろうということを、さっそく強調していた。
指揮官は試合後のピッチ上でのJ2優勝セレモニーの際、選手たちに何度も集合写真の中心でシャーレを掲げるようにせがまれた。一度は思い切り拒否して端っこに逃げた。ただ、もう一度選手たちから懇願されると、盛り上がりに水を差すのもいけないと、指揮官は全員の中心に立ってシャーレを天上に掲げた。
「監督というのは後ろから支える職業であり、私がシャーレを掲げるのはどうなのかと思いました。先頭を走り、気付いたら誰も付いてきていない。それが監督業ではよく起こり得ること。だから支えていくべきだとずっと思っています。ただ、サポーターとの約束を守り、今日1日だけは喜びに浸り、応援してくれた想いに応えたいと思いました」
“主役”は本意ではない。
ネガティブな指揮官を前へ押し出す松本のサポーターの熱量。そうやってバランスも取れているのだと感じる。
翌日の地元の新聞は市民新聞、一般紙、スポーツ紙、いずれも松本山雅一色だった。こうした現象は他の地域ではなかなか見られず、山雅パワーを思い知らされた。
ただ、確かに指揮官が懸念していた通りと言うべきか、結果的に、反町監督が前面に出ている紙面が多かった。反町監督の手柄であるような紙面が目立った。
おそらく、指揮官はそれを危惧していたのだ。
そのように自身が“主役”になることは(反町監督を10年以上前から取材してきた身としては)、本望ではなかったのだろうとも感じた。