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J2優勝でも反町監督はニヒルだった。
シャーレ掲揚拒否と松本山雅の未来。
posted2018/11/30 16:00
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph by
J.LEAGUE
11月17日の松本山雅FC対徳島ヴォルティス戦。満員に埋まったサンプロアルウィンでの一戦はスコアレスドローに終わり、松本は4年ぶりのJ1復帰を勝ってスカッと決めることはできなかった。しかし他カードの結果によって、初のJ2優勝をも成し遂げられた。
そんな今季のエンディングとピーター・ウタカら強力アタッカー陣を揃える徳島を無失点に抑え込んだことを含め、反町康治監督は「今季の松本を象徴するような試合だった」と振り返った。
徐々に噛み締める喜び。それは、来年、さらなる歓喜があるのではないかとジワジワと来る期待にもつながる。
「長らく監督をしてきましたが、拍手で迎えられた記者会見は初めてですね」と記者会見場に現れた反町監督は言って喜んだ。ただ、指揮官が笑顔を浮かべたのは、その冒頭だけだった。
新潟、湘南、松本……率いたチームはすべてJ1に引き上げてきた。しかし新潟を除く2チームで降格も味わっている。クラブを昇格させる難しさとともに、もしくはそれ以上に、J1に残留させる難しさを誰よりも知る1人である。
反町監督らしい言葉の数々。
松本の昇格が2度目とあり、昇格決定後の松本の選手やスタッフを見ていても、大いに歓喜する人もいれば、意外とクールに安堵している人もいて、ギャップがあった。
もちろん反町監督は後者のほうで、誰よりもニヒルなペシミストだった。
「私たちには勢いがあり、それでJ2は行けた部分もあるが、トップリーグに上がればそれだけでは通じない。その部分をしっかりやらなければいけない」
「『優勝』という結果も、アディショナルタイムに(モンテディオ)山形のスーパーなミドルが決まったから、少しだけこうしてにこやかな顔をできているだけで、現実は厳しいです」
「優勝争いをした大分トリニータ、横浜FC、FC町田ゼルビア、この3チームに我々は1勝もしていません。そういう現状を考えると、J2の中で果たして、このシャーレとトロフィーに値するチームなのか、もろ手を挙げて喜べるとは思っていません」
「ただ――言い方を替えると、勝負強さの出た1年になったと思います。苦しいゲームを失点ゼロで抑えて、勝つ試合も多かったです。22試合。半分を超えている」