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J2優勝でも反町監督はニヒルだった。
シャーレ掲揚拒否と松本山雅の未来。 

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塚越始

塚越始Hajime Tsukakoshi

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photograph byJ.LEAGUE

posted2018/11/30 16:00

J2優勝でも反町監督はニヒルだった。シャーレ掲揚拒否と松本山雅の未来。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

反町監督はニヒルだが情に厚い。歓喜のアルウィンで「アルプス一万尺」を踊る場面も。

松本最大の強みと陰の部分。

 そして2019年、松本がJ1で生き残るためのテーマも、そこにあると感じた。

 徳島から加入2年目でキャプテンを任されたDF橋内優也は、「反町監督と出会って、これまで個の力に任せてきたところを、ポジショニングなども考えるようになり、学ぶことばかりでした」と語っていた。

 実際、指揮官も松本の守備面の統一感について、「チームの統一を図るために、自分を犠牲にしなければならない面を、チームのスタイルとして共有してやってもらわないといけない。ウチは、それがしっかりできてきている」と語るなど、その高い守備意識と体現できるところが、松本の最大の強みだと捉えていた。

 一方、東京五輪世代にあたる21歳のFW前田大然は最前線からチームを牽引して昇格に貢献した。「これまで優勝のかかった大舞台で常に負けてきた。ホッとしている」と語ったように、彼自身も、東京五輪を目指すU-21日本代表にも選ばれるなど、この1年でまた一回り大きく成長できた。

 しかし昨季水戸で記録した13ゴールから7ゴールに減らしている。「前にも行けるが、同じように後ろに向かうパワーもある」と反町監督は評価していたが、前田の前にも後ろにも向かえるパワーがあったからこそのJ1昇格だった。ただ、エースストライカーとしては、物足りない数字に終わったのも事実だ。

「チームの顔」は現れるか。

 反町監督ではない「チームの顔」が、とりわけ前線の選手の中から出現しないと、J1残留は難しい。そういった存在がいなくても戦えることが松本の特徴とも言えるが、指揮官はやはりそこに課題を感じているようだった。

「メッシやクリスティアーノ・ロナウド……優勝するチームには、得点王争いをする選手がいます。(J2優勝を果たした)ウチにそういった選手がいなかったのは珍しいことと言えます。ただ、それがもしかしたら来季に向けての課題かもしれません」

 そこそこのレベルの選手を集めるよりも、チームの軸であり顔になり得る選手を獲得したい。前田(海外クラブからも関心を示されているというが)が一段と輝ければ理想的ではあるが……前線を輝かせられる選手もほしい。

【次ページ】 昇格が早く決まったからこそ。

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